タイ料理と言えば、辛い、甘い、酸っぱいのイメージを持っている方が多いことでしょう。多くの料理の酸っぱいの素は、マナオ (มะนาว) の搾り汁。正確にはマナーオ。トムヤムクンやソムタム、ラープムーなどには欠かすことはできません。パッタイやカオソーイ、カオパットにもマナーオが添えてあったり、ミヤンカムのように皮ごと使うこともあります。
なお、料理以外でも街中のドリンク屋台の通称レモンティーは、マナーオを使ったチャーマナーオ。他にも、レモンスカッシュ、レモネード、フィンガーボールの水、食材の変色防止にもマナーオが使われます。マナーオは、タイの食文化において、欠かすことができない食材の一つです。
マナーオの話 ...
マナーオは柑橘系の果物ですが、タイでは八百屋で売っているのです。スーパーマーケットでも野菜コーナに置いてあります。野菜の扱いなのですよ。
さて、海外品種の導入や交配による多くの改良品種があるようです。かつて、市場を独占していた古代種のマナーオ・カイ (มะนาวไข่) なるやや楕円形の品種から、現在はマナーオ・ペン (มะนาวแป้น) 系の新しい品種にすっかり置き換わっている状況。カイ (ไข่) とは「卵」、それに対してペン (แป้น) とは「平べったいもの」のこと。マナーオペン (มะนาวแป้น) 系は「すだち」のような形です。マナーオペン系にもマナーオペンランパイ (มะนาวแป้นรำไพ) やマナーオペンピチット (มะนาวแป้นพิจิตร) などの品種があります。果皮の薄さ、種の少なさ、香り/風味、酸味の強さ、果汁量の評価ばかりではなく、単位あたりの収穫量、病気への耐性など生産者サイドの評価による改良品種がたくさんあるのです。なお、マナーオペン系の違いは見た目からの判断が難しいようで、タラートの八百屋やスーパーマーケットでは、マナーオペンで売っています。なお、現在の市場での一番人気は、マナーオペンランパイです。
他にも、サイズが一回り大きな種無しのマナーオライマレット (มะนาวไร้เมล็ด) やタヒチから導入したマナーオタヒチ (มะนาวตาฮิติ) などの品種があります。なお、この種無し品種は価格が高いのでスーパーマーケットの扱いが多く、タラートの八百屋ではあまり見かけません。
以下の写真が、スーパーマーケットに並ぶマナーオペンとマナーオライマレットの様子。左側がマナーオペン、右側が一回り大きな種無しのマナーオライマレットで「SEEDLESS LIME」と書いてあることも。
以下の写真のスーパーマーケットでは、左から種無しのマナーオライマレット、マナーオペン、そしてタイ産のレモン。最近は、タイ国内でもレモンの栽培が行こなわれています。タイ語でマナーオルアン (มะนาวเหลือง) と言います。「黄色いマナーオ」の意味です。
以下の写真は、タラートの八百屋の種無しのマナーオライマレット。マナーオペンと比べると価格が高いですよ。
以下の写真は、タラートや街中の屋台の八百屋で売っているマナーオペンの様子。スーパーマーケットはパック詰め後のキロあたりの価格設定が多いようですが、八百屋の場合は個数売り、〇個で〇〇バーツが基本。
以下の写真は、とある朝市のマナーオ屋台の様子。サイズで価格が違います。見づらいですが、左から8個/20バーツ、5個/20バーツ、4個/20バーツです。
以下の写真は、別な日の同じマナーオ屋台の様子。価格が安くなっているのですよ。マナーオも果物ですので、当然価格は変動します。スーパーマーケットのようなキロあたりでの価格設定ができないので、個数で価格を調整しているのです。
マナーオは完熟すると表皮の色が黄色に変わります。一般的に青い時には香りが強いが果汁が少ない、完熟に近づくにつれ香りは弱まるが果汁は増えると言われています。なお、熟度が増すと価格は安くなります。もし、自分で選べる八百屋や専門店なら、サイズや熟度の選択基準は作る料理や保存期間と相談してみてください。
ところで、タイスタイルのマナーオの切り方は果実に対して縦切りです。この方法だと種が取りやすい上に、使いたい分だけカットすれば必要以上に残した房を傷つけることがないのです。目からウロコです。
そうそう、スーパーマーケットには、マナーオのジュースやパウダーも売っています。我が家の嫁は「本物のマナーオがいい」と否定的なので、我が家では使ったことがありません。利用するのも面白いと思いますよ。
マナーオ以外の酸味のある果物の話 ...
タイ料理の酸味は、基本果物の酸味です。マナーオ以外の果物もあるので幾つが紹介します。
まずは、マカーム・プリアオ (มะขามเปรี้ยว) なる酸味種のタマリンドの果肉ジュース。パッタイやスープ、カレー系の煮物に使われます。ゲーンソム (แกงส้ม)、ゲーンマッサマン (แกงมัสมั่น)、トムクローン (ต้มโคล้ง) など。マナーオと比べてまろやかな酸味で、とろみも付きます。
次に、青いマンゴー (マムアン:มะม่วง) です。ソムタムやヤムプラードゥックフーなどのヤム料理に使われます。ヤムと言えば、酸味のあるシーダートマト (マクアテートシーダー:มะเขือเทศสีดา) もあります。ナムプリックオーンやトムカーガイなどのスープに入れたり、カオパットやカイチャオにも使われます。
そして、面白いのが柑橘系のコブミカン (マックルー:มะกรูด) ですね。コブミカンの葉や果皮は、香り付けや臭み消しに使われるので酸味とは関係ありません。なお、葉はタイ語でバイマックルー (ใบมะกรูด) と言い、いろいろな料理に使われています。バイ (ใบ) とは「葉」のこと。果皮はカレーペーストに練り込まれことが多いでしょう。
酸味は、コブミカンの果汁にあるのです。コブミカンの酸味を利用した代表的な料理がゲーンテーポー (แกงเทโพ) です。空芯菜と豚肉をレッドカレーペーストとココナッツミルクを使って煮込んだ酸味のあるスープ。コブミカンの果実をカットしてまるごと使うので、酸味と風味が楽しめます。ゲーンテーポーは、おかず屋台やぶっかけ飯屋にあります。なお、コブミカンの独特の香りは果皮にあるので、果皮を綺麗に剥いてから搾れば、マナーオのように使えるとの話もあるようです。
その他にも酸味のある果物には、青いスターフルーツ (マフアン:มะเฟือง)、タリンプリン (ตะลิงปลิง)、マカームポム (มะขามป้อม)、パイナップル (サッパロット:สับปะรด)、サントル (グラトーン:กระท้อน)、キンカン (ソムジープ:ส้มจี๊ด) などもありますが、積極的に料理の酸味付けに使うことは稀だと思います。
なお、キンカンは「富の象徴/繁栄をもたらす」意味を含む縁起の良い木とされていて、特に中華系の方々は、庭木や鉢植えの観賞用として扱うことが多いようです。