クアクリン (คั่วกลิ้ง) とは、南部地方のターメリックを使ったカレーペーストの肉炒めの総称。クア (คั่ว) とは「炒る/煎る」、クリン (กลิ้ง) とは「転がる/転がす」の意味。転がすように炒めて作るからクアクリンなのだろう。おかず屋台/ぶっかけ飯屋では人気のある定番料理の一つ。ただし、相当に辛い味付けです。スライスした豚肉を使えばクアクリン・ムー (คั่วกลิ้งหมู)、豚のひき肉を使えばクアクリン・ムーサップ (คั่วกลิ้งหมูสับ) と言います。ムー (หมู) とは「豚肉」、ムーサップ (หมูสับ) とは「豚のひき肉」のこと。もし、鶏のひき肉を使えばクアクリン・ガイサップ (คั่วกลิ้งไก่สับ) でしょう。

以下の写真は、ぶっかけ飯屋のクアクリン・ムーサップの様子。ターメリックの黄色が目立つので直ぐに分かります。


南部地方のカレーペーストの総称は、プリックゲーンターイ (พริกแกงใต้) と呼ばれています。プリックゲーン (พริกแกง) は「カレーペースト」の総称、ターイ (ใต้) は「南」の意味。日本の味噌と同じようにタイのカレーペーストにも地域性があるのです。プリックゲーンターイは、乾燥唐辛子を始め、ニンニク、胡椒、ガランガル (カー:ข่า)、レモングラス (タックライ:ตะไคร้)、エシャロット (ホームデーン:หอมแดง)、そしてターメリック (カミン:ขมิ้น) などの多くのスパイスをクロック(調理器具の石臼)で潰した後、オキアミを塩漬けして発酵させてたガピ (กะปิ) を加えて作ります。プリックゲーンターイを使った南部地方の料理は、非常に辛いのが一般的。
さて ...
クアクリン・ムーサップの作り方は至って簡単。プリックゲーンターイを香りが立つまでしっかり油で炒めた後、豚のひき肉を加えて火が通るまで転がすように炒めます。必要があれば、ナンプラーと砂糖で味を調整して完成。なお、コブミカンの葉 (バイマックル:ใบมะกรูด) の千切りやみじん切りを入れることが多いですね。
プリックゲーンターイは、今ではスーパーマーケットで売っています。またプリックゲーンクアクリン (พริกแกงคั่วกลิ้ง) なる名前のペーストもあります。粉末上のクアクリンの素には AJINOMOTO (Aj) の Kua Kling がありますよ。自分でクアクリンに挑戦するのも面白いでしょう。

以下は、ウィチット ムクラ シェフが作る牛のひき肉を使ったクアクリン・ヌア (คั่วกลิ้งเนื้อ) の作り方の動画。参考まで ...
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=DryueRt-neg
こぼれ話
そうそう、サトー豆の季節になると、多くのおかず屋台/ぶっかけ飯屋にはサトー豆を入れたクアクリンが並びます。クアクリン・サトー (คั่วกลิ้งสะตอ) と言います。サトー豆とは、和名 ネジレフサマメノキ (英名:Parkia speciosa) の種子。興味のある方は、以下参照願います。