ムークロープ (หมูกรอบ) のムー (หมู) とは「豚」、クロープまたはグロープ (กรอบ) とは、「カリカリ/クリスピー」の意味。私の過去の紹介記事の中でもムークロープとは「カリカリに揚げた豚の三枚肉」と書いてはいるのだが ... 美味しいムークロープとは、豚の三枚肉の皮の部分のみがカリカリなのである。単に硬いだけのカリカリではなく、歯で噛んだ時にサクッと崩れる食感、豚皮を油で揚げたケープムー (แคบหมู) に近い食感なのだ。
以下の写真は、朝市で見かけることが多いムークロープ屋台の様子。大きなブロックのムークロープを切り分けて量り売りが基本。売り切れ御免のスタイルが多い。ムークロープの料理を提供する店は多いが、食材やおかずとして売っている店や屋台は意外と少ない。後述するが非常に似た料理のムートートの屋台のように街中に溢れていることはないのだ。なお、屋台では一般的に味見ができる。私のチェックポイントは、もちろん豚皮のカリカリ感。
以下の写真は食べやすい大きさにカットしたムークロープ。美味しいムークロープの作り方をざっくり説明すると、塩茹でした三枚肉のブロックを皮の部分だけがカリカリ/サクサクになるように油で揚げる流れ。塩茹で三枚肉のチャーシューに豚皮の油揚げした香ばしさとカリカリ感がプラスされたような仕上がりになるのだ。
今のバンコクの相場なら、安い屋台で 100gあたり 70〜80バーツ、高い屋台なら 100バーツを超えるだろう。ところで、ムークロープ自体にしっかり味が付いているわけではないので、何らかのタレを付けて食べるのが一般的である。以下の写真はタレ付きパック詰めのムークロープ。ご飯が入った弁当スタイルを売っている屋台も時々見かける。
店側が用意してあるタレは店により違いがある。一般的には酸味と辛味のあるカオマンガイのタレやシーフード料理の定番のタレのナムチムシーフードに違い。子供用には甘い黒醤油のシーユーダムワーンを用意していることもある。なお、タレを付けない屋台も多い。何故なら、自分の好きなタレで食べるのが一番美味しいからだろう。また、他の料理の材料に使うこともあるだろう。日本の醤油やとんかつソース、イサーン風ナムチムジェオ、我が家の娘が小さい時は塩 ... 何でもありなのだ。以下の写真は、ナムプリックガピを使った時の我が家のムークロープである。
さてさて ...
如何にしたら豚皮がサクッとしたカリカリ感を出せるのかが、ムークロープ職人の腕の見せ所だろう。例えば、豚の三枚肉の大きなブロックを塩茹でしてから、皮全体にフォークや金串で念入りに穴を開けたり細かく切れ目を入れたり ... 皮の部分を酢に付けたり重曹を塗ったり ... 皮の水分を減らすために天日干ししたり炭火オーブンの中で吊るしたり ... 何故かと言えば、皮の水分が少ないほど油で揚げたときに皮が綺麗に膨らむからだ。さらに身も締り、旨味が凝縮される効果もあるのだろう。その後、皮の部分のみを油で揚げ、皮が膨らんだら全体を揚げて仕上げる工程のようだ。職人によりいろいろなテクニックがあるのだ。そうそう、完成したムークロープに大きく包丁が入れてあるのは、切り分け時の皮の崩れ防止のためである。
豚皮のカリカリ感が命のムークロープ。豚皮や三枚肉本体が硬くて噛み切れないことなど決してないのである。バンコクなら至る所に朝市が立つ。貴方も美味しいムークロープに出会えるかもしれない。一度のぞいて見てはどうだろう。
なお、クイジャップの専門店には美味しいムークロープがあることが多い。以下、参照願う。
ところで ...
ムークロープを使った料理と言えば、ガパオ炒めのパットガパオ・ムークロープが人気だろう。パットカナームークロープもあるかもしれない。どちらもフードコートでは定番のメニューである。さてさて、フードコートで食べたそのムークロープの皮は噛み切れないほど硬かったことはないだろうか? ムークロープの断面の縁が非常に硬かったことはないだろうか? 正直、残念なムークロープも多いのは確かである。中には、硬いムークロープを好む方もいるとは思うが ...
こぼれ話(三枚肉のムートート)
ムークロープに非常に似た料理に、三枚肉のムートートがある。ムートートとは、細切りの豚肉などに醤油やナンムラーベースの下味を付けて油で揚げた豚肉料理の総称。いろいろなスタイルのムートート屋台が街中に溢れている。なお、ムートートには塩茹での工程はない。
以下の写真は、三枚肉のムートート屋台の様子。赤身のムートートとは違い、三枚肉のムートートは非常に美味しいのは間違いない。ただし値段が高い。
一般的には、三枚肉のブロックを長く薄くスライスしてから下味を付けて油で揚げ、食べやすい大きさにカットする流れ。だから、写真のように断面の縁が茶色い見た目の仕上がりになるのだ。以下の写真は、豚皮を拡大した様子。皮に照りがあり、ムークロープのような膨らんだ様子が見られない。この豚皮は、ゴムを噛んでいるようで、歯が丈夫な方でないと歯が立たないのである。なお、この硬い皮が好きな方が一定数いるのである。かく言う我が家の嫁も若い時分はその一人だったのだが、最近は食べられないようだ。55555 ...
以下の写真は、滅多に見ることができない三枚肉のブロックをシート状のまま使ったムートート屋台の様子である。前述のムークロープのブロックと皮の表面が明らかに違うと思う。このブロックのムートートをムークロープのように食べやすい大きさにカットすれば、写真の右下に見えるムークロープのパック詰めのように映るだろう。
この写真の中の上に写っている山積みを説明すると ... 左は普通の赤身のムートート、真ん中は一般的な三枚肉のムートート、右にかすかに写っているのが三枚肉のブロックをシート状のままで作ったムートートなのだ。なお、三枚肉のブロックをシート状で作っても皮が硬いことに違いはない。
フードコートの皮の硬いパットガパオのムークロープは、残念なムークロープなのか、三枚肉のムートートなのか ... 私の思う美味しいムークロープを作るためには、手間と時間を含めコストがかかるのは言うまでもないことではあるが ...