タイ料理に使われるバジルには「ホーラパ-」「メンラック」「ガパオ」「イーラー」の4種類があります。なお、タイバジルとはホーラパ-のことです。ホーラパ-とメンラックはそのまま生食でも食べますが、ガパオとイーラーは、葉や茎に細かい毛があり、生食には適しません。バジルは葉だけでなく茎や花も食べることがきます。
なお、サラネー (สะระแหน่) と呼ばれている「ミント」もバジルの仲間で、ラープなどのヤムやデザートの飾りに使いますが、一般的に料理には使いません。
ホーラパ- (โหระพา)
スイートバジル (Sweet Basil) に分類されるバジルです。タイバジルとはホーラパ-を指します。葉の縁のギザギザが小さく葉が少し大ぶりで、葉や茎には細かい毛がありません。ホーラパ-の茎は赤紫色をしています。グリーンカレーやホーモックプラーなどをはじめ、さまざまなタイ料理に使われるバジルです。食べると口の中がスッキリするので、生のままで料理の付け合わせとしても使われます。イサーン系料理店ではキャベツと一緒に良く添えられているバジルがホーラパ-です。一般的なレストランでも茎付きのままで出されるので、指で摘んで柔らかい部分だけをちぎって食べるのがタイスタイルです。さてさて、この付け合わせのホーラパ-をみるとレストランの格式が分かると言うものです。しっかりしているレストランのホーラパ-は非常に綺麗で新鮮ですね。料理と一緒に食べるも良し、口直しに食べるも良し。私はホーラパ-が大好きなので料理の上にガンガン乗せて食べてしまいます。55555 ...
メンラック (แมงลัก)
レモンバジル/ヘアリーバジル (Lemon Basil/Hairy Basil) に分類されるバジルです。ホーラパーに似ていますが、全体的に少し小ぶりで、ホーラパーのような味わいがした後、柑橘系の香りが広がるのでレモンバジルなのです。ホーラパ-は茎や葉の一部が赤紫色をしていますが、メンラックは全体的に緑色です。柑橘系の風味との相性が良い魚や鶏料理に使われるバジルです。タイのそうめん料理であるカノムジーン (ขนมจีน) の付け合わせの生のバジルは基本的にメンラックです。結構キツめの柑橘系の香りですので食べれば、ホーラパーとの違いが分かると思います。
なお、このメンラックの種子は、見た目の面白さとダイエット効果が期待できることもあり、デザートやドリンクに入れて食べたりもします。身近なところでは、ナムタオフー屋台(豆乳屋台)には、必ずと言ってよいほどトッピングの一つとして用意されています。
メンラックの種子は、水分を含むと透明のゼラチン状の膜を張ります。口に含むとプルプル感、噛むとプチップチッした食感があります。
ガパオ (กะเพรา)
ホーリーバジル (Holy Basil) に分類されるバジルです。ホーラパ-とは違い、葉の縁のギザギザ、葉や茎には細かい毛があり生食にはあまり適しません。加熱調理すると独特な刺激的な香りが引き立ち、スパイシーな風味があります。パットガパオに使われるバジルで、タイ人には非常に馴染みがあります。観光客にも人気のある豚挽き肉のパットガパオ・ムーサップは、とても美味しいですよね。パットガパオは、簡単ですので自分流で作るのもの面白いですよ。
ところで、
ガパオには「白ガパオ」と呼ばれるガパオ・カーオ (กะเพราขาว)、「赤ガパオ」と呼ばれるガパオ・デーン (กะเพราแดง) の2種類あります。
ガパオ・カーオは、茎や葉が緑色で、バンコクの市場に流通しているガパオの多くがこの品種です。我が家の近所のタラートにあるガパオもガパオ・カーオですね。
一方のガパオ・デーンは、茎が赤紫色、葉は緑色 〜 赤紫色で、葉の大きさがガパオ・カーオより小ぶり。乾燥した土壌や水不足になると葉の色の赤紫味が強くなるようです。雨が降ったりして水不足が解消すれば、葉の色は緑色に戻るとのこと。なお、個体差があり、水不足とは関係なしに赤紫色が強いものもあるようです。地方では、家の敷地内で栽培されているガパオはガパオ・デーンの方が多いようで、嫁の実家の敷地にもガパオ・デーンがあります。ガパオ・カーオもありますが … ガパオ・カーオに比べ、香りと辛味が強く、野生味が感じられるガパオです。生臭さを消す効果があるので、臭みの強い食材に使われます。なお、薬用として用いられるのがこの品種です。
好みの違いは個人差でしょうが、風味や色味からガパオ・カーオの方が人気があるので、市場に流通しているガパオの多くがこのガパオ・カーオと想像できそうです。
イーラー (ยี่หร่า)
ガパオと同じ仲間のバジルで、ツリーバジル (Tree Basil) に分類されるバジルです。ガパオと同じように葉の縁のギザギザ、そして細かい毛がありますが、ガパオより葉が大きい特徴があります。地方によりいろいろな呼び名があるようです。ガパオユアン (กะเพราญวน)、ホーラパー・チャーン (โหระพาช้าง)、ガパオクワーイ (กะเพราควาย)、ラー (หร่า) などなど。肉、特に魚の生臭さを消すために、魚介類のカレーなどの煮込み料理によく利用されるバジルです。
タイ南部地方では馴染みのあるバジルで、南部のカレーであるゲーンクア (แกงคั่ว) には、イーラーが使われますね。また、ガパオの代わりに炒めものにも使うとのこと。
ところで、同じ綴りのイーラー (ยี่หร่า) は、スパイスのクミン (Cumin) のタイ語でもあるので、バイ・イーラー (ใบยี่หร่า) と言えば、このバジルを指すことになります。葉をタイ語でバイ (ใบ) と言います。だから、ホーラパ-の葉ならバイ・ホーラパ-、ガパオの葉ならバイ・ガパオです。
こぼれ話
ガパオ、ホーラパ-、メンラックの3種類は、バンコクのタラートで簡単に見つけることがでるので、機会があれば観察してみてくださいね。ガパオと比べてイーラーは癖が強いためなのか、バンコクでは人気がないようで、小さなタラートでは見つけるのが難しいようです。
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