タイには、ガフェボーラーン (กาแฟโบราณ) と呼ばれているちょっと変わったコーヒーがあります。ガフェ (กาแฟ) は「コーヒー」、ボーラーン (โบราณ) とは「古代/昔ながら」の意味。ローストしたコーヒー豆以外にローストしたトウモロコシの種やタマリンドの種などの穀物も入っています。なお、細かく粉砕するので布フィルターを用いて抽出します。一般的なコーヒーと比べると、独特なローストの香りを強く感じますが、味わいは非常にマイルドなコーヒーです。
人気があるのが冷たいアイスコーヒーのオーリアン (โอเลี้ยง) です。抽出後に砂糖を加えて、たっぷりの氷を入れたコップに注いで完成。オーリアンの起源は、潮州系中国人の移民にあるようで、潮州語の「烏涼:ou-liang」の発音に由来。「黒く冷たい」の意味で砂糖入りのアイスブラックコーヒーを指します。ネスカフェなどのインスタントコーヒーが普及するまでの長い間、タイでアイスコーヒーと言えば、オーリアンだったのです。もちろん、コンデンスミルクやエバミルクを入れるものありですが、黒くなくなるので屋台などではガフェボーラーンと言い換えることがあります。
とある街中の冷たい飲み物屋台を例にオーリアンを紹介します。
屋台の店先にコンデンスミルクやエバミルクの缶、さらに色付きシロップの瓶が置いてあります。ネスカフェやオバルチン (Ovaltine)、さらにミルクティーのチャーノム (ชานม) やココアなども扱っています。以下の写真のメニュー看板には、それらのブレンドもあると書いてあります。例えば「ガフェボーラーン + オバルチン」、タイでは珍しいことでは無いのですよ。なお、アイスブラックコーヒーのオーリアンではないのでガフェボーラーンと書いてあるのでしょう。
以下の写真が、オーリアンを作るためにコーヒー粉から布フィルターを用いて抽出している様子です。
この屋台は、氷を入れた昔ながらのビニール袋入りなのですが、安定感のある硬くてしっかりした紙袋に入れてもらえます。量が多いのに 25バーツ也。もちろん、プラ容器の屋台もあります。
値段が高いのですが、タイ茶で有名なチャトラムー (ChaTraMue:ชาตรามือ) ショップにもあります。メニューには、中国語で「烏凉:โอเลี้ยง = オーリアン」と書いてあります。「古式珈琲:กาแฟโบราณ = ガフェボーラーン」はミルク入りのオーリアン。全て 50バーツ也。
一般的にミルク入りのオーリアンは、ガフェボーラーン、または「冷たい」を意味するイェン (เย็น) を付けてガフェボーラーンイェン (กาแฟโบราณเย็น) と言います。さらに、オーリアンヨックロー (โอเลี้ยงยกล้อ) と言うこともあります。ヨックロー (ยกล้อ) とは、オートバイや自転車などで前輪を宙に浮かせ、後輪だけで走行するウイリーのこと。ミルクピッチャー(缶入りコンデンスミルク/エバミルク)を傾ける様子をウイリーに喩えているのでしょう。
ネスカフェは嫌いだが、ガフェボーラーンは好きと言うタイ人が一定数いるらしいですよ。まだ、オーリアンやガフェボーラーンを飲んだことのない同胞諸君、一度、挑戦してみてください。
ところで ...
ホットブラックコーヒーは、潮州語の「烏熱:ou-ruoh」の発音に由来するオーユア (โอยัวะ) と言います。テーブルと椅子が用意されている昔ながらのコーヒー屋台などでは、底にコンデンスミルクが沈んでいるスタイルで出てくることが多いと思います。自分好みの甘さになる量を溶かして飲むのです。このコンデンスミルク入りのオーユアとガラスコップに入れた半熟卵のカイルアック (ไข่ลวก)、そして揚げパンのパートンコー (ปาท่องโก๋) がタイの昔ながらのモーニングセットなのですよ。カイルアックは、機会があれば紹介します。
こぼれ話
以下の写真は、チャトラムー (ChaTraMue) のオーリアン用のコーヒー粉。大きなチャトラムーショップや通販で買えます。布フィルターを用いて抽出する必要があります。
砂糖入りのインスタントのオーリアンはカオチョン (khaoshong:เขาช่อง) なるメーカーにあります。水で溶いて氷を入れれば完成。スーパーマーケットで売っています。
以下の写真もスーパーマーケットにある瓶入りのオーリアン。