イサーン料理のレストランの人気メニューの一つにナムトックコームーヤーン (น้ำตกคอหมูย่าง) があります。たぶん、ナムトックコームーヤーンを注文する方も多いことでしょう。コー (คอ) は「喉/首」、ムー (หมู) は「豚肉」のこと。コームー (คอหมู) で「豚トロに相当する部位」を指します。ヤーン (ย่าง) は「焼く/炙る」の意味。
しからば、ナムトック (น้ำตก) とは ...
ナム (น้ำ) は「水」、トック (ตก) は「落ちる」の意味で、ナムトックで「滝」を意味するのですが、料理名に使われるようになった由来には諸説あるようです。塊肉を炭火で炙る過程で肉汁が垂れ落ちる様、その肉汁が炭火に落ちる時の音が滝の音に似ているなどが有力なようです。いずれにしても、肉汁が垂れ落ちている状態とは、完全に火が通っていない最も肉が美味しいとされる「ミディアムレア」の状態のことなのです。実際には、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉の種類と使う部位により最善の焼き加減に仕上げるのが料理人の腕の見せどころでしょう。なお、塊肉は下味を付けてから焼きます。
乾燥唐辛子、ナンプラー、マナーオの絞り汁、砂糖で作ったドレッシングで、スライスした焼いた豚トロ、ハーブ系野菜、さらにカオクア (ข้าวคั่ว) を加えて和えた料理がナムトックコームーヤーンです。辛味、酸味、塩味、甘味のあるイサーンの定番の味付けです。使うハーブ系野菜は、タイのエシャロットのホームデーン (หอมแดง)、タイのミントのサラネー (สะระแหน่)、パクチーファラン (ผักชีฝรั่ง)、トンホーム (ต้นหอม) などが多いでしょう。
実はこの料理って、イサーンスタイルのラープムーとそっくりなのですよ。豚のひき肉を使えばラープムー、豚の塊肉を焼いてからスライスして使えばナムトックムーヤーンと名前が変わるのです。ラープとは、細かく刻んだミンチ肉の料理だから名前が変わるのでしょう。なお、名前にナムトックを付ける場合には、必ず焼いた肉でなければならないのです。例えば、焼いた鶏肉を使えばナムトックガイヤーンになります。ガイ(ไก่) とは「鶏肉」のこと。ナムトック〇〇ヤーンのように必ず、正確な料理名にはお尻に「ヤーン」が付きます。ナムトックとヤーンは対で使うのですね。〇〇の部分には「肉の種類」または「部位+肉の種類」が入るはずでしょうね。なお、ラープもナムトックもイサーンスタイルの肉を使ったヤム。ヤム (ยำ) とは「和える/サラダ」のこと。例えば、イサーンスタイルでヤムコームーヤーン (ยำคอหมูย่าง) を作れば、それはナムトックコームーヤーンかな ...
以下の写真は、最近お気に入りのイサーン系専門のおかず屋台からテイクアウトしたナムトックコームーヤーンの様子。下手なレストランより遥かに美味しいのですよ。飾り付けにハーブ系野菜を少しの乗せれば見た目も立派な料理に変身します。なお、値段の高いレストランが美味しいとは限らないのがコームーヤーンです。
実は、このボリュームで50バーツ也。
そうそう、イサーン料理のレストランで、ラープムーにしようか、ナムトックコームーヤーンにしようかを迷った時には、ラープムーとコームーヤーンの両方を注文。コームーヤーンをラープムーのドレッシングで食べれば、ナムトックコームーヤーンの出来上がり。なお、コームーヤーンには、つけダレにナムチムジェオが付いてきます。
以下の写真のナムトックコームーヤーンは、イサーンスタイルの付け合わせの野菜セットもお皿の中に入っていますが、一般的に付け合わせの野菜セットは別になっていることが多いでしょう。
コームーヤーンについては、以下も読んでみてください。
こぼれ話
クイッティオルアは、ナムトック (น้ำตก) のスープが基本。考案者は海南人のようで海南粉(牛肉粉)を参考にしたらしい。薄くスライスした牛肉の鮮度を保つために氷を使っていたのです。当然、牛肉の血が混じった水が流れ落ちることに。その血汁を容器に受けてスープに入れることで、スープが美味しくなるのです。だから、ナムトック。今は豚の血を直接スープに入れるスタイルに変わっていますが、名前はそのままなのです。クイッティオルアに限らず、豚の血を使ったスープならクイッティオナムトック。