ナムプリックパオ (น้ำพริกเผา) のナムプリック (น้ำพริก) とは「唐辛子ベースのディップやソース」の総称、パオ (เผา) とは「強火で焼く/燃やす」の意味。バンコクを含む中部地域でよく使われるタイを代表するナムプリックの一つです。全く油を使わないナムプリックもある中、たっぷりの油を使う特徴があります。
ざっくりと作り方は ...
まず、材料の乾燥唐辛子、ニンニク、ホームデーン (หอมแดง) なるタイのエシャロットをそれぞれ別々に香りが立つまで炭火で炙ったり、またはフライパンでしっかり乾煎りします。故に「強火で焼く」意味の「パオ」と呼ばれているはずなのですが 、おそらく、材料を「パオ」せずに多目の油で炒める方法が主流だと思います。その後、全ての材料をクロック(調理器具の石臼)で潰して混ぜ合わせたペーストを作ります。
次に、ペーストをフライパンに移し、小エビを塩漬けして発酵させて作った旨味調味料のガピ (กะปิ) 、酸味のあるタマリンドソース、ココナッツシュガー 、ナンプラーなどで味を調整して油で炒め直します。材料を炒める時に使った残り油があれば利用します。使う油の量は作り手次第で、乾燥防止や長期保存のために油をたっぷり使うスタイルがあります。辛味、酸味、甘味、塩味、ガピの旨味のあるナムプリックパオの完成です。なお、旨味をプラスするために砕いた干しエビや焼き魚のほぐし身をペーストに加えるレシピもあります。非常に辛いもの、甘味が強いもの、油が多いものなど作り手次第でいろいろなバリエーションがありますが、総じて甘味のあるナムプリックです。
スーパーマーケットで売っている瓶詰のメーカー品は、油をたっぷり使っているスタイルが多いようです。以下の写真は、チュアハーセン (CHUA HAH SENG:ฉั่วฮะเส็ง) ブランドのナムプリックパオの様子。油がたっぷり使われていることが分かりますね。他にメープラノム (MAEPRANOM:แม่ประนอม) も人気のあるブランドです。なお、メーカー品は、干しエビを加えていることが多いようです。
以下の写真は、スーパーマーケットに並んでいるナムプリックパオの様子。他にも幾つかのメーカー品があります。
以下の写真は、嫁の知人宅の自家製のナムプリックパオ。自家製品の個人販売や屋台などで売っているものは、油が少ないスタイルが多いですね。
以下の写真は、嫁の実家の自家製のナムプリックパオ。同じく油が少ないスタイルです。ナムプリックパオは、簡単に作れるので自分で作る方も多いでしょう。ただし、乾燥唐辛子を油で炒めると、そのニオイで悩まされることになります。粘膜に対するダメージも半端ないので、開放感のある場所でしか行えません。55555 ...
なお、油が少ないスタイルは、ナムプリックターデーン (น้ำพริกตาแดง) と見分けがつかないことがあります。同じ材料と味付けで油を使わずに仕上げたものがナムプリックターデーンなのですよ。
さてさて ...
茹で野菜や生野菜、カイチャオのディップソースとしての使い方はもちろんですが、トムヤムクンナムコン (ต้มยำกุ้งนำ้ข้น)、ホイラーイパットナムプリックパオ (หอยลายผัดน้ำพริกเผา) などの調味料として、また、カオソーイ (ข้าวซอย) などのトッピングとしても利用されます。そうそう、ナムプリックパオで炒めたチャーハンも人気。カオパット・ナムプリックパオ (ข้าวผัดน้ำพริกเผา) と言います。庶民の隠れた伝統料理なのです。
ところで、タイにはカノムパンムーヨン ・ナムプリックパオ (ขนมปังหมูหย็องน้ำพริกเผา) なる人気の調理パンがあるのです。ムーヨン (หมูหย็อง) なるふわふわの豚肉のをナムプリックパオと練り合わせたものをパンに挟んで食べるのです。そのためなのか? 最近、トースト用のナムプリックパオが発売されています。スーパーマーケットで売っています。
こぼれ話
油で炒め直すタイミングで豚のひき肉を加えたスタイルはナムプリックパオ・ムーサップ (น้ำพริกเผาหมูสับ) と言い人気があります。ムーサップ (หมูสับ) とは「豚のひき肉」のこと。これだけで美味しいご飯のおかずになるのです。