サツマイモはタイ語でマンテート (มันเทศ) と言います。マン (มัน) は「芋類」の総称、テート (เทศ) は「外国」の意味なので「外国の芋」。ちなみに、ジャガイモはマンファラン (มันฝรั่ง) と言い「西洋の芋」。どちらも、昔から食べられていた芋ではないことが想像できますね。なお、タイで芋と言えばタロイモのプアック (เผือก) でしょう。今でも、ローカル色の濃い朝市や八百屋では、サツマイモは当然、ジャガイモさえも置いていないことがあるのですよ。
ところで、最近はマンテート改めマンワーンイープン (มันหวานญี่ปุ่น) と呼ばれていることが多いようです。ワーン (หวาน) とは「甘い」、イープン (ญี่ปุ่น) とは「日本」のこと。要は、タイのサツマイモが日本種に置き換わっているのです。そして、この「日本の甘い芋」の人気が高まっています。
多分、今から10年程前(間違っていたらごめんなさい)のこと。ローソンがサラデーン駅のシーロムコンプレックス側の近くにオープンしたことがあるのですが、オープン当時、焼き芋を買い求めるタイ人で溢れ、店の前にまで焼き芋を山積みにしていた光景を思い出します。そして、一部の高級感のあるスーパーマーケットやドンキホーテ「DON DON DONKI」の出店による焼き芋販売。そのあたりからマンワーンイープンの人気が高まってきたのかもしれませんね。最近ではタイ産の日本種のサツマイモが流通し、日本からの輸入品もありで、よく目にするようになりました。
始めに ...
街中の屋台で見かけると思う貧弱な茹でたサツマイモ。今ではタイでも立派なサツマイモが作れるので規格外のサツマイモなのでしょう。しかし、これが食べやすいし、安いし、それなりに美味しいのですよ。


以下の写真は、3種類の貧弱なサツマイモを売っている屋台の様子。左からオレンジ色、黄色、紫色のサツマイモ。

以下の写真は、テイクアウトした3種類の貧弱なサツマイモの様子。

バンコク郊外なら10バーツ、バンコクなら20バーツ程度。買ったことがない同胞諸君、一度挑戦してみてください。甘すぎるお菓子よりもヘルシーでしょう。
以下の写真は、大きなマーケットで前述の3種類の立派なサツマイモを売っている様子。左から黄色、紫色、オレンジ色のサツマイモ。実は日本種のサツマイモなのです。

さてさて ...
タイの日本種のサツマイモの話をしてみましょう。
まず、タイには山岳民族を助けるための農業支援を目的とした王室のロイヤルプロジェクト (Royal Project Foundation:โครงการหลวง) があるのですが、この中でマンテートイープンシーソム (มันเทศญี่ปุ่นสีส้ม)、マンテートイープンシームアン (มันเทศญี่ปุ่นสีม่วง)、マンテートイープンシールアン (มันเทศญี่ปุ่นสีเหลือง) の3種類が指定されています。順番に「オレンジ色の日本のサツマイモ」「紫色の日本のサツマイモ」「黄色の日本のサツマイモ」の意味です。このロイヤルプロジェクトのバックアップがあり、タイでの日本種のサツマイモの生産が増えているのです。既に多くの日本種が導入されているようです。
次に、分かりやすい日本種のサツマイモの動画を見つけたの紹介します。タイトルは、マンワーンイープン (มันหวานญี่ปุ่น) で日本のサツマイモ。5種類の日本種のサツマイモを自前の畑で栽培し、焼き芋を作っている様子です。なお、前半部分だけ見れば十分。

この動画の中に出てくるサツマイモは、マンムアンオキナワ (มันม่วงโอกินาว่า)、マンルアンベニハルカ (มันเหลืองเบนิฮารุกะ)、マンソムオキナワ (มันส้มโอกินาว่า)、マンルアンナムプンインドー (มันเหลืองน้ำผึ้งอินโด)、マンルアンキエロ (มันเหลืองคิเอโระ) の5種類。順番にその意味は、「沖縄の紫色のサツマイモ」、「紅はるかなる黄色のサツマイモ」、「沖縄のオレンジ色のサツマイモ」、「インドネシアの蜂蜜なる黄色のサツマイモ」、「キエロなる黄色のサツマイモ」です。なお、ナムプンインドー (น้ำผึ้งอินโด) とは「インドネシアの蜂蜜」の意味。これはインドネシアの蜜芋のチレンブ (Cilembu) に見た目が似ているための喩えのようで白皮種のサツマイモ。キエロ (คิเอโระ) とは「黄色 - Kiiro」のことで外皮は赤紫色の品種。
八百屋やスーパーマーケットで見かけるサツマイモは、肉色で区別していることが多いようで、タイ語の色名を後ろに付けることが一般的。品種は明示ぜず、タイ産なのか輸入品なのかも不明。なお、スーパーマーケットの場合は輸入品と書いてあることも。ただし、ベトナム産の日本種のサツマイモもありますよ。
黄色種はシールアン (สีเหลือง) やルアン (เหลือง) ですね。シー (สี) とは「色」の意味で付けたり/付けなかったり。例えば、マンテートイープンシールアンやマンワーンルアン、マンシールアンなど。紫色種はシームアン (สีม่วง)、オレンジ色種はシーソム (สีส้ม) ですが、マンカイ (มันไข่) やマンキャロット (มันแครอท) と呼ぶこともありますね。カイ (ไข่) は「卵」、キャロット (แครอท) は「人参」のこと。タイの卵の黄身は赤色の強いオレンジ色なのです。だから、黄身のタイ語は、カイデーン (ไข่แดง) と言います。デーン (แดง) は「赤」の意味。なお、白皮種はシーカオ (สีขาว) と呼ばれている様で「栗こがね系」なのかな? そうそう、紅はるかは人気があり完全にブランド化しているように感じます。
以下の写真は NBK の「DON DON DONKI」のオープン当時の焼き芋コーナーの様子。焼き上がり時間待ちのタイ人で溢れていました。そして、傍らには「紅はるか」と「シルクスイート」の販売カウンター。「紅はるか」人気のきっかけの一要因になったのかもしれませんね。



以下の写真は、スーパーマーケットの makro のサツマイモの様子。「紅はるか」だけ「べにはるか」と謳っています。値段も高いのです。



以下の写真は、とあるタラートの八百屋で売っているタロイモとオレンジ色のサツマイモの様子。私の周りではオレンジ色のサツマイモを見かけることが多いように感じますね。

タイでは、サツマイモの活用方法がまだまだ限定的。焼き芋とカノムカイノッククラター、唐揚げにしたマントートしか思い浮かばないですね。何しろタイは米大国なので主食は米、デザートは豊富なバナナ、芋は重要な食材ではなかったのでしょうね。最近の甘い日本種人気と健康食品としての需要が高まっています。今後に期待したいところです。
こぼれ話
以下の写真は、貧弱なサツマイモとタロイモを売っている屋台の様子。タロイモは非常に小さくて日本の里芋のようですね。

ところで、タイには古くからお菓子作りや色付けに利用されているマンムアン (มันม่วง) と呼ばれている「紫芋」があります。このマンムアンの学名は「Dioscorea alata」でヤムイモの仲間。最近は紫色のサツマイモをマンムアン (มันม่วง) と呼び混同しているようです。サツマイモの学名は「Ipomoea batatas」で別な芋です。そうそう、プアックシームアン (เผือกสีม่วง) なる紫種のタロイモもあります。
ところで、最近のお菓子作りや色付けには日本種の紫色のサツマイモが使われています。
なお、ヤムイモの仲間の「紫芋」に興味のある方は、マンルアット (มันเลือด) やマンカーオガム (มันข้าวก่ำ) で検索願います。さらには、マンムースア (มันมือเสือ) も。参考まで ...