春巻きの総称をタイ語でポーピア (เปาะเปี๊ยะ または ปอเปี๊ยะ) と言う。語源は中華料理の「薄餅」。この薄餅の潮州語発音 [boh-bian] がタイ語化されてポーピアと呼ばれているようだ。街中を歩いていると揚げ春巻き屋台を目にすることがある。揚げ春巻きはタイ語でポーピアトート (เปาะเปี๊ยะทอด) と言う。トート (ทอด) は「揚げる」の意味。さらに、プアックトート屋台やタオフートート屋台でも見つけることができる。なお、ポーピアと言えば、揚げ春巻きを指すことが多いだろう。



具には細切りの豚肉やエビなどが入っていると思うだろうが、屋台の場合には肉類や魚介類は入っていないことが多い。キャベツやタイの硬い豆腐、椎茸、春雨などが具材の基本。なお、タイには中華系の方々を中心に肉類や魚介類、卵などの動物性食品を食べないキンジェー (กินเจ) と言う期間がある。キン (กิน) とは「食べる」、ジェー (เจ) とは中国語の「齋」のことで「精進料理」のこと。これらの屋台はキンジェーが始まると精進料理を示す「齋/เจ」と書かれた黄色い旗やマークを表示するのが一般的なのだ。そのためなのか、この肉類や魚介類が入っていない揚げ春巻きをポーピアジェー (ปอเปี๊ยะเจ) と呼ぶことがある。多くの屋台で売られている揚げ春巻きはポーピアジェーなのだ。
以下の写真は、屋台からテイクアウトした揚げ春巻きの様子。具はキャベツ、硬い豆腐、椎茸、春雨のポーピアジェーのスタイル。カットするかと問われることもあるが、一般的には無条件でハサミで半分にカットして紙容器やビニール袋に入れるのだ。つけダレのスイートチリソースと竹串が付いてくる。タイでは、揚げ春巻きは小腹が空いた時のおやつなのだ。



ところで、この春巻きの皮をペンポーピア (แป้งปอเปี๊ยะ) と言うのだが、小麦粉の生地を薄く焼いて作るのだ。ペンポーピアを売っている専門屋台も存在する。


以下の写真は、油で揚げる前のペンポーピアで具を巻いてある状態。

そうそう ...
タイには、具をペンポーピアで巻いただけで揚げないスタイルもある。ポーピアソット (ปอเปี๊ยะสด) と言う。ソット (สด)とは「フレッシュ/生」の意味なので「生春巻き」である。甘酸っぱい醤油ベースのタレを付けて食べるのが一般的。このポーピアソットの屋台も時々見かける。

ポーピアソットの場合、具には中華系ソーセージのクンチアンやキュウリが入り、錦糸卵が乗っているスタイルが多いだろう。
以下の写真は、とあるポーピアソット屋台の様子。プライスカードには、タイ語の「เปาะเปี๊ยะสด:ポーピアソット」と中国語の「润饼」の文字。润饼/潤餅とは潮州や台湾でのこの料理の呼び名である。


一般的に生春巻きと言えば、ライスペーパーの皮で巻いたスタイルを思い浮かべると思うが、タイではポーピア・ユアン (เปาะเปี๊ยะญวน) と呼ぶ。ユアン (ญวน) は「ベトナム」の意味なのだ。なお、タイではライスペーパーの皮で巻いたスタイルよりクイッティアオの皮で巻いたスタイルの方が圧倒的に人気がある。このスタイルをクイッティアオルイスワン (ก๋วยเตี๋ยวลุยสวน) と言う。
こぼれ話
揚げ春巻きのつけダレのスイートチリソースが合わないなら酢醤油やポン酢を使えば、ご飯のおかずにもなるだろう。
ペンポーピアはスーパーマーケットで売っている。屋台フェスなどに出店しているロティサイマイ屋台では包み皮であるロティを現場で焼いていることが多いが、ロティだけも売ってくれる。実は、このロティとは着色したペンポーピアなのだ。ペンポーピアで自分好みの具を巻いてポーピアソットを楽しむのも面白いだろう。乾燥したライスペーパーより扱いが簡単なのだ。



