ロートチョンシンガポールとは? もう一つのロートチョンナムガティ

ロートチョンシンガポールのアイキャッチ タイのお菓子/デザート

タイの伝統的なデザートの一つにココナッツミルクを使ったロートチョンナムガティ (ลอดช่องน้ำกะทิ) があるが、ロートチョンシンガポール (ลอดช่องสิงคโปร์) なる別なスタイルもあるのだ。伝統的なロートチョン (ลอดช่อง) は、米粉ベースの澱粉と緑色のパンダンの葉の搾り汁で作られているのだが、ロートチョンシンガポールのロートチョンは、タピオカ粉ベースで作られている。パンダンの葉の搾り汁による色付けも弱いので透明感があり、形も細くて長い麺状が一般的。ミルクティーのチャノム・カイムック (ชานมไข่มุก) に入っているタピオカパールを細い麺状にしたようなモノで食感も極めて近い。ロートチョンの名前の由来と作り方は、ロートチョンナムガティを参照されたし。ナムガティ (น้ำกะทิ) とは「ココナッツミルク」または「砂糖が入った甘いココナッツミルク」のこと。なお、シンガポール (สิงคโปร์) の名前の由来については後述する。

さて、大きなガラス製やプラ製の入れ物を使い、特徴的な白色のココナッツミルクの中にロートチョンが入っていれば、ロートチョンシンガポール。米粉ベースのロートチョンだとココナッツミルクに浸して置くと溶け出してしまうのだが、タピオカ粉ベースだと溶けないのである。

特徴的な白色のココナッツミルクのロートチョンシンガポール
特徴的な白色のココナッツミルクのロートチョンシンガポール
特徴的な白色のココナッツミルクのロートチョンシンガポール(右)
特徴的な白色のココナッツミルクのロートチョンシンガポール(右)

以下の写真は、ロートチョンシンガポール専門屋台の様子。直ぐに食べたいならプラコップに甘いシロップとロートチョンシンガポールを注ぎ入れた後、クラッシュアイスを入れて完成。テイクアウトなら別々なビニール袋に入れたシロップとロートチョンシンガポール、さらにクラッシュアイスも別なビニール袋に入れて貰えるはずだが不要なら断ることも可能。その場合には自宅にある氷を使えば良いのだ。この屋台のプライスカードには、プラコップ入りは 35バーツ、袋入りは 30バーツと書いてある。ボリュームと価格は店により異なるのは言うまでもない。

ロートチョンシンガポール専門屋台の様子
ロートチョンシンガポール専門屋台の様子

赤い食紅で色付けしたロートチョンやサイコロ状にカットしたゼリー、小さくカットした黄色いジャックフルーツなどを彩りに入れるスタイルもある。

赤いロートチョンと黄色いジャックフルーツ入りのロートチョンシンガポール
赤いロートチョンと黄色いジャックフルーツ入りのロートチョンシンガポール
黄色いジャックフルーツ入りのロートチョンシンガポール
黄色いジャックフルーツ入りのロートチョンシンガポール

以下の写真は、街中のデザート屋台で見かけたビニール袋入りのロートチョンシンガポールの様子。別に用意してあるビニール袋には、シロップとカットした黄色いジャックフルーツが入っているのだ。クラッシュアイスが付かない場合には、自分で用意することになる。

デザート屋台で見かけたロートチョンシンガポールの様子
デザート屋台で見かけたロートチョンシンガポールの様子

シンガポールの名前の由来
ロートチョンシンガポールは、 中華街のヤワラーにあるシンガポールポーチャナー (สิงคโปร์โภชนา) が起源。かつて、このエリアにはシンガポールと言う名前の映画館があり、近所にあったポーチャナーが現在のロートチョンシンガポールスタイルの冷たいデザートを販売したのである。当時、映画を見た後に若い男女がロートチョンを食べるために、よく立ち寄ることで有名になったのだ。とのことで、ロートチョンシンガポール。シンガポールとは映画館の名前だったのだ。80年以上営業を続けている老舗。かつてあった場所のエリアに商業ビルを建てることになり、最近 70mほど離れた現在の場所に移転している。アイム チャイナタウン (I'm Chinatown) の近く。
現在の場所の google map:https://maps.app.goo.gl/swsurYL81icrjBUL9

以下の写真が現在のシンガポールポーチャナーの店の様子とロートチョンシンガポールの様子。シロップとロートチョンシンガポールを入れた状態のプラコップが用意されているので、クラッシュアイスを入れれば完成。非常にスピディーである。なお、テーブル席やカウンター席が用意されている。 店先にあるロートチョンシンガポールのオブジェが目印。なお、看板にはタイ語で「สิงคโปร์」、漢字で「新嘉坡」と書いてあるが、どちらも「シンガポール」のことである。

シンガポールポーチャナーの店先の様子
シンガポールポーチャナーの店先の様子
シロップとロートチョンシンガポールが入っているプラコップの様子
シロップとロートチョンシンガポールが入っているプラコップの様子
シンガポールポーチャナーのロートチョンシンガポール
シンガポールポーチャナーのロートチョンシンガポール

ヤワラーを歩き疲れたらシンガポールポーチャナーで一休み。一杯 30バーツだったが、2025年から 35バーツに値上がり。以下は、2024年の12月末にシンガポールポーチャナーに立ち寄った時の写真。値上げの告知が貼ってあったのだ。

シンガポールポーチャナーの値上げの告知
シンガポールポーチャナーの値上げの告知

こぼれ話
以下の写真は、以前にアイコンサイアム  [ICONSIAM] で見かけたロートチョンシンガポールの様子。

アイコンサイアムで見かけたロートチョンシンガポールの様子
アイコンサイアムで見かけたロートチョンシンガポールの様子
ロートチョンシンガポールのプライスカード
ロートチョンシンガポールのプライスカード

このプライスカードのタイ語表記と英語表記には違いがある。
一番上のアイテムのタイ語[ลอดช่องสิงคโปร์ (กะทิอบควันเทียน)]は、ロートチョンシンガポール、カッコの中はガティオップクワンティアンと書いてある。
二番目のアイテムのタイ語[รวมมิตร (กะทิอบควันเทียน)]は、ルアムミット、カッコの中は一番上と同じくガティオップクワンティアンと書いてある。なお、ルアムミットとは「色々な種類が混ざっている状態/ミックス」の意味。赤い色の物も混ざっているのでルアムミットと書いているのだろうが、ルアムミット・ナムガティ (รวมมิตรน้ำกะทิ) と言えば、いろいろな物が入っていることが多いのだ。興味があれば、タプティムグロープを参照されたし。

さてさて、注目するのがガティオップクワンティアン (กะทิอบควันเทียน) の文言である。ティアンオップ (เทียนอบ) なる処理を施したココナッツミルクを使っているとの意味なのだ。香りの成分を蜜蝋で固めたローソクの火を消した後の煙の香りを移したココナッツミルクで、主にデザートを作る時に使われるココナッツミルク。タイの伝統に沿ったデザートを作るには、ティアンオップが必須の作業なのだ。
なお、最近はこの香りが嫌いなタイ人も増えているようで、ティアンオップ済みのデザートを見つけるのが難しい状況に変化しているのだ。ティアンオップに興味のある方は「ティアンオップとは ...」を参照願う。