ラープムー (ลาบหมู) とは、イサーン地方や北部地方の代表的な料理で、豚ひき肉とハーブ系の野菜を和えたスパイシーな料理の総称。ただし、イサーン地方のラープムーと北部地方のラープムーには違いがあるのです。北部地方のラープムーは、イサーン地方のラープムーと区別するためにラープヌア (ลาบเหนือ) と呼ばれることもあります。ヌア (เหนือ) とは「北」の意味です。牛肉の意味ではありません。
イサーンのラープムー
イサーン料理のレストランの人気のメニューの一つがラープムー。作り手/作り方で入れる具材や味付けに違いがあります。豚のレバーなどの内臓系が入っていたり、豚皮が入っていたり、お汁の量も入れるハーブ系の野菜の種類も量も ... いずれにしても、豚ひき肉のうま味と乾燥唐辛子の辛味、ナンプラーの風味、マナーオ (มะนาว) の酸味、そしてハーブ系の野菜が上手に調和した美味しい料理です。そうそう、もち米を炒ってから、すり潰したカオクア (ข้าวคั่ว) が入っています。香ばしさや味の深み、さらに食感の変化をもたらす効果があります。このカオクアが入っていることが、イサーンスタイルのラープムーの特徴なのです。

以下の写真はレストランのイサーンスタイルのラープムー。テーブルにはキャベツやホーラパ-などの付け合わせの野菜が用意されていることも ... 私はホーラパ-なるタイバジルが好きで一緒に食べるのが至福の時。


そうそう、イサーンには豚のレバーのラープがあります。タップワーン (ตับหวาน) と言います。
ところで、イサーン料理のレストランでは、どうしてもカオニャオ (ข้าวเหนียว) の選択が多いと思いますが、汁っけの多いラープムーなら米粉で作ったカノムジーン (ขนมจีน) も合いますよ。なお、お店によっては黒もち米のカオニャオダム (ข้าวเหนียวดำ) があるかも ... お試しあれ!



イサーンスタイルのラープムーは、バンコクの街中の屋台やタイ飯レストラン、もちろんイサーン料理のレストランで食べることができます。なお、ぶっかけ飯屋にもありますね。普通のご飯のおかずにも最適です。ただし、ぶっかけ飯屋のラープムーには、ハーブ系野菜があまり入っていないかもしれません。
北部のラープムー(ラープヌア)
北部スタイルのラープムーは、イサーンスタイルのラープムーとは違いマナーオやカオクアは使いません。さらにナンプラーも使わずに塩が基本。そして、プリックラープ (พริกลาบ) やプリックラープヌア (พริกลาบเหนือ) と呼ばれている数種類のスパイスがブレンドされた乾燥唐辛子パウダーを使います。バンコクでは、北部料理のレストランで食べることができます。

ラープムー・ディップ
何となんと ... 豚の生血とミンチにした豚の生肉を使うラープがあるのです。ラープムー・ディップ (ลาบหมูดิบ) です。ディップ (ดิบ) とは「生」の意味。生肉は油身の無い赤身を使います。作り手/作り方により違いがありますが、茹でた豚の内臓系部位や豚皮の細切りが入っている場合も多いですね。我が家の嫁は北部地方の出身なので田舎に戻った時には、私が作る手伝いもしたり ... もちろん何度となく食べていますよ。見た目に血の色は隠せないのですが生臭さはないのです。さて、生肉のラープムー・ディップが美味しいかと言えば??? なお、豚の生肉のなので安心感は無いですよね。
ラープムークア
ラープムー・ディップに火を通した料理はラープムークア (ลาบหมูคั่ว) またはラープクア (ลาบคั่ว) と呼ばれています。クア (คั่ว) とは「炒る/煎る」の意味。ラープムークアは安心感もあり、とても美味しいのですが、もちろん辛い料理です。北部のレストランでは、このラープムークアが一般的。



そうそう、家庭で作る場合は豚の生血を使うとは限りません。使わないのもありですね。また、嫁の実家では、カリカリに油で揚げた豚の三枚肉 (ガークムー:กากหมู) を混ぜるのですが食感の変化も楽しくて、この料理だけでご飯が進むのです。家庭料理なので各自のレシピで美味しくいただくことが基本でしょう。

ラープムーは自分で作れます
ラープムーですが、好きな材料で自分で作ることができます。多分、辛味耐性のない方はレストランのラープムーは辛いと感じているのでは? 自分で作れば、辛さの調整もできます。ラープムーはキャベツやレタスに巻いて食べても美味しいし、もちろんご飯のおかずにもなります。貴方好みのラープムー作りに挑戦するのも面白いでしょう!
豚の生血を使わなければラープムークアは非常に簡単です。豚ひき肉と粗挽きの唐辛子粉に醤油や塩(ナンプラーもOK)でお好みに味付けして炒めた後に、刻んだハーブ系野菜と混ぜるだけ。なお、豚ひき肉を炒める時には、少量の水と砂糖を加えることをお忘れなく。炒めると言うより味付けした少量の煮汁で茹でる感じに近いですね。これだけでも十分美味しいのですよ。そうそう、最近はスーパーマーケットにもプリックラープヌアが売っているので利用すれば本格的でしょう。ちなみに、我が家には嫁の実家からもらったプリックラープヌアのストックがあります。

さてさて、酸味の好きな方、イサーンスタイルのラープムーも簡単に作れます。Lobo や AJINOMOTO (Aj) にはラープ/ナムトックの素があります。イサーンスタイルのラープやナムトックを作る場合なら最適です。
以下の写真は、スーパーマーケットで売っている Lobo ブランドの「Laab Namtok Seasoning Mix」ですが、このパウダーには辛味と酸味があります。安いので一度お試しあれ!

ポイントは、パウダーをケチらずに味を濃い目にすること。必要があるなら、ナンプラーと砂糖を加えましょう。味に深みと輪郭がでます。使うハーブ系野菜は、ホームデーン、または普通のタマネギ、サラネー、パクチー、トンホーム、ホーラパ-もあり。要は何でもあり。今ではカオクアも袋詰めや瓶詰めがスーパーマーケットで売ってます。なお、私はラープの素は使わず、自分で味付けします。何故って、簡単に作れるから ...
こぼれ話
イサーンスタイルのラープムーの豚のひき肉を豚のスライス肉に変えると料理名がナムトックムー (น้ำตกหมู) に変わります。一般的には焼いた豚肉をスライスして事前に準備して置き、ラープムーと同じ味付けでササッと混ぜる感じ。その後、ハーブ系野菜と和えれば完成。人気があるのが、脂の乗った豚トロを焼いたコームーヤーン (คอหมูย่าง) を使ったナムトックコームーヤーン (น้ำตกคอหมูย่าง) ですね。
ところで ...
以下の写真は、イサーンスタイルの牛ひき肉のラープ。ラープヌア (ลาบเนื้อ) と言いますが、このヌア (เนื้อ) とは「牛肉」の意味。「北」の意味のヌア (เหนือ) と「牛肉」の意味のヌア (เนื้อ) がありますが、カタカナ表記にすると同じになってしまうので注意が必要ですね。なお、タイでは牛肉は人気がありません。
