黄金色のお菓子にフォイトーン (ฝอยทอง) があります。フォイ (ฝอย) は「繊維状の物/細い物」、トーン (ทอง) は「黄金/金」の意味。見た目通りの名前のお菓子です。この黄金色は「卵の黄身」の色。なお、フォイトーンと同じく「卵の黄身」で作るお菓子にトーンイップ (ทองหยิบ) とトーンヨート (ทองหยอด) があります。そして、もちろん黄金色のお菓子。イップ (หยิบ) とは「拾い上げる」、ヨート (หยอด)とは「少しずつ注ぐ」の意味。タイでは黄金色は縁起の良い色、そして黄金色のお菓子もまたしかり。黄金のトーンには「富と成功」の意味が込められているのです。これらのお菓子は結婚式などの祝い事や贈り物に使われるタイの伝統的なお菓子なのです。
なお、この3種類のお菓子は、タイのデザートの女王と呼ばれている日系人のターオ・トーンキープマー (ท้าวทองกีบม้า) が考案したお菓子。ポルトガル料理を参考にして、タイを代表するお菓子を幾つも創作した女性です。そして、街中のお菓子屋台では、これらのお菓子が並べて売られているのです。詰め合わせのセット売りも多いでしょう。
まず、一番多く目にするのがフォイトーンでしょう。フォイトーンのみでも立派なお菓子ですが、他のお菓子の彩りや甘味付けのトッピングに利用することが多いかもしれません。アヒルの卵や鶏卵の卵黄のみを溶き、沸騰した甘いシロップの中に細い糸状になるように流し入れ、茹で上げて作ります。なお、ジャスミンの香り付けがあるかもしれません。売り方やトッピングとしての利用方法の違いで、水分が少なくサクサク感のあるタイプ、シロップが絡んで湿った感じのタイプがあります。いずれにせよ、甘いものが苦手な方には、口に合わないかもしれませんね。
ところで、緑色のフォイトーンもあるのです。緑色では黄金色であるはずのフォイトーンではありませんよね。55555 ... この緑色のフォイトーンは、フォイトーン・バイトゥーイ (ฝอยทองใบเตย) と呼ばれています。パンダンの葉 (バイトゥーイ:ใบเตย) の搾り汁や着色料で緑色に色付けしてあるのです。
トッピングとしてのフォイトーンが使われる代表的なお菓子が、カノムブアン (ขนมเบื้อง) ですね。以下の写真の黄色いトッピングがフォイトーンです。
以下の写真は、フォイトーンをトッピングに使ったカノムモーゲンです。フォイトーンは多くのお菓子のトッピングに使われます。
次に、トーンイップですが、火を切り沸騰を止めた甘いシロップの表面に平たい円盤状になるように溶いた卵黄を浮かべるように静かに流し入れ、再度、沸騰させて茹で上がったら、花びらの形になるようにぐい呑などを利用して作ります。なお、溶いた卵黄は事前にしっかり泡立てて置きます。泡立てることで、シロップに浮かぶのでしょう。
最後に、トーンヨートは、火を切り沸騰を止めた甘いシロップの中にボール状になるように溶いた卵黄を落とし、再度、沸騰させて茹で上げて作ります。なお、溶いた卵黄は泡立ててから米粉を加えてあるので、パンケーキのような生地ですね。雫のような形になっているトーンヨートも多いですよ。
以下の写真は、お菓子屋台でよくみるフォイトーン、トーンイップ、トーンヨート、そしてメットカヌン (เม็ดขนุน) の詰め合わせ。左上のボール状のものがトーンヨート。右上の細長いものがメットカヌン。
以下は、タイ公共放送 (Thai PBS) のトーンイップとトーンヨートの作り方の動画。興味のある方は参考にしてください。
YouTube :https://www.youtube.com/watch?v=tDK1MEQkLtA
ところで、メットカヌンの中には、緑豆の餡が入っているので、前述の3種類のお菓子とは少し違います。メットカヌンとは「カヌンの種」の意味。ジャックフルーツの種です。緑豆の餡をカヌンの種の形に丸め、溶いた卵黄でコーティング後、甘いシロップの中で茹で上げて作ります。タイでは、カヌンは縁起の良い木なのです。
フォイトーン、トーンイップ、トーンヨート、メットカヌンは、街中の至る所のお菓子屋台で売っています。タイの伝統あるお菓子なのでしょう。ただし、これらのお菓子が美味しいと思えるには時間がかかるかもしれませんよ。55555 ...
以下の写真は、セブンイレブンで売っているフォイトーン、トーンイップ、トーンヨート、メットカヌンの詰め合わせ。
以下の写真は、大きな袋詰めの様子。左からフォイトーン、メットカヌン、トーンヨートです。トーンイップは形が崩れるので袋詰めができないのかな?
こぼれ話
タイの菓子作りに使用する卵は伝統的にはアヒルの卵。アヒルの卵黄は赤味のあるオレンジ色で黄身の割合が多い特徴があります。鶏卵の卵黄は黄色が強いから日本語は「卵黄/黄身」。しかし、タイ語で卵黄をカイデーン (ไข่แดง) と言います。カイ (ไข่) は「卵」、デーンとは「赤」の意味なので「卵赤/赤身」ですね。鶏卵を使ったり、アヒルの卵に鶏卵を混ぜて使ったりで、フォイトーンなどの色は黄色〜赤色と幅があります。なお、 赤色の強いフォイトーンは、着色している可能性もありそうですよ。