タイの伝統菓子 トーンムアン ココナッツミルクのロールクッキー

トーンムアンのアイキャッチ タイのお菓子

街中のお菓子屋台でよく見かける黒ゴマ入りのロール状のお菓子。見た目から最近のお菓子のように感じる方もいるかと思いますが、実はタイの伝統あるお菓子でトーンムアンと言います。トーンムアンの歴史は 17世紀のアユタヤ時代まで遡るのです。当時、ポルトガル料理を参考にして、今日ではタイを代表するであろうお菓子を幾つも創作した女性がいたのです。タイデザートの女王と呼ばれている日系人のターオ・トーンキープマー (ท้าวทองกีบม้า) です。トーンムアンは彼女が創作したとされるお菓子の一つなのですよ。

街中のお菓子屋台のトーンムアンの様子
街中のお菓子屋台のトーンムアンの様子
袋詰めのトーンムアン
袋詰めのトーンムアン

時が流れ、今ではいろいろなレシピが考案されています。基本的な作り方は、ココナッツミルクに小麦粉やタピオカ粉など、ココナッツシュガー、卵を混ぜてゆるい生地を作ります。その生地を専用の焼き器で丸く薄いシート状に焼き、火が通ったら丸棒状の物を用いて筒状に丸めて完成。

専用の焼き器と筒状に丸めたトーンムアン
専用の焼き器と筒状に丸めたトーンムアン

ちなみに、専用の焼き器はタイ語でピムトーンムアン (พิมพ์ทองม้วน) と言います。
以下の写真が昔ながらのトーンムアンの専用焼き器。挟んで両面焼きができるようになっています。今では、いろいろなメーカーから便利な焼き器が発売されているようです。

昔ながらのトーンムアン専用の焼き器
昔ながらのトーンムアン専用の焼き器

トーンムアン (ทองม้วน) のトーン (ทอง) とは「金」、ムアン (ม้วน) とは「筒状に巻く」の意味。焼けた生地の黄褐色の色を金色に見立てた命名なのでしょう。その名前が富の繁栄に通じているので、贈り物に使ったりする縁起の良いお菓子のようです。

トーンムアンの様子
トーンムアンの様子

以下の写真は、生地にパンダンの葉の搾り汁や紫芋のペーストなどを入れて緑色や紫色に色付けしてあるトーンムアン。他にもココアパウダーを使ったチョコレート風味なども ...

色付けしてあるトーンムアン。
色付けしてあるトーンムアン

レシピから想像できるようにココナッツミルクの風味の強いサクサクした食感のお菓子に仕上がります。作り手次第で、太さや長さ、さらに甘味やサクサク感にも多少の違いがありますね。

ところで、以下の写真もトーンムアン。緑色のものはパクチーの葉なのです。一般的にはトーンムアンケム (ทองม้วนเค็ม) と呼ばれています。作り手のレシピ次第ですが、パクチーの根を潰したペーストやコショウを生地に練り込んだり、塩を加えたりして甘味を押さえてあります。ケム (เค็ม) とは「塩っぱい」の意味。なお、写真は楕円の形になっていますが、丸い筒状が普通だと思います。

トーンムアンケムの様子
トーンムアンケムの様子
トーンムアンケムのパクチーの葉の様子
トーンムアンケムのパクチーの葉の様子

なお、トーンムアンケムに対して普通のトーンムアンをトーンムアンワーン (ทองม้วนหวาน) と呼ぶこともあります。ワーン (หวาน) とは「甘い」の意味。なお、ケムと言っても塩っぱくはないですよ。やはり甘いのです。作り手のレシピ次第でしょうがトーンムアンワーンの場合、強烈なココナッツミルクの風味に甘味が加わると重く感じ、飽きてしまう方もいるのでは? その点、パクチーの風味と甘さ控えめなトーンムアンケムはバランスが良い仕上がりだと思いますよ。好みの分かれる所ではありますが ...

そうそう、以下の写真を見てください。トーンムアンの長さを揃えたり、壊れにくくするテクニックは筒状の端に当たる所を折り曲げるのですよ。

筒状の端に当たる所を折り曲げるテクニック
筒状の端に当たる所を折り曲げるテクニック

トーンムアンは、カンチャナブリーの代表的なお土産ですが、バンコクならスーパーマーケットなどのお土産コーナーで簡単に買えます。英語表記だと「Crispy Coconut Rolls」と書いてあることが多いかな? たくさんのメーカーからいろいろな風味や工夫を凝らしたトーンムアンが発売されています。壊れないような工夫のあるパッケージもあり、お土産にも使えますよ。

スーパーマーケットのトーンムアン(ドリアン味)
スーパーマーケットのトーンムアン(ドリアン味)

以下の写真の左側の赤いラベルは、ムーヨン (หมูหย็อง) なる「ふわふわの豚肉」が詰まっているタイプ。トーンムアンムーヨン (ทองม้วนหมูหยอง) と呼ばれています。

お土産用のトーンムアン
お土産用のトーンムアン
トーンムアンムーヨン
トーンムアンムーヨン

以下の写真のように細く長いトーンムアンもあります。

細く長いトーンムアン
細く長いトーンムアン

以下の写真は近所の路上で見つけたクレッドガホー (เกล็ดกะโห้) の様子。Kanom Kledkrahoo と書いてありますが、材料も焼き方もトーンムアンと同じはず。ただし、筒状に巻くムアンスタイルではないのです。

筒状に巻いてないクレッドガホー
筒状に巻いてないクレッドガホー

こぼれ話(トーンムアンソッド)
トーンムアンはサクサクになるまで焼くのですが、柔らかい状態で焼くのを止めるスタイルのトーンムアンがあるのです。トーンムアンソッド (ทองม้วนสด) と言います。ソッド (สด) とは「生/フレッシュ」の意味。焼き加減や使う粉で食感の違いがあると思いますが、もっちり感のある仕上がりです。一般的には、生地にココナッツの果肉を入れるスタイルが多いと思います。

トーンムアンソッドを焼いている様子
トーンムアンソッドを焼いている様子
焼き上がったトーンムアンソッド様子
焼き上がったトーンムアンソッド様子

以下の写真は、もっちり感のあるトーンムアンソッドの様子。

もっちり感のあるトーンムアンソッドの様子
もっちり感のあるトーンムアンソッドの様子

なお、トーンムアンソッドに対して普通のトーンムアンをトーンムアングローブ (ทองม้วนกรอบ) と呼ぶこともあります。グローブ (กรอบ) とは「カリカリ」の意味。だから、トーンムアンの英語表記には「Crispy Coconut Rolls」と書いてあるのでしょう。