カノムティアン (ขนมเทียน) とは、バナナの葉で包んであるピラミッド型のお菓子。タイ風に言うなら仏塔 (チェディ:เจดีย์) のような形となりそうです。カノム (ขนม) は「お菓子」、ティアン (เทียน) は「ロウソク」の意味なのだが何故だろう? タイ北部地方ではカノムジョーク (ขนมจ็อก) とのこと。ジョーク (ขนมจ็อก) とは、北部の方言で「先端が尖ったように束ねた状態」を言うらしい。その他にも地域により違う呼び名があるようです。ちなみに、カノムノムサーオ (ขนมนมสาว) とも呼ばれているらしい。ノムサーオ (นมสาว) とは「女性のオッパイ」のこと。55555 ... カノムティアンは一般的な呼び名のようです。なお、表面の質感が滑らかでロウソクに似ているからティアンとのことらしい。


カノムティアンは、中華系のタイ人が春節に作るカノムケン (ขนมเข่ง) をアレンジしたお菓子。カノムケンと同じようにもち米粉と砂糖で生地を作り、中に何らかの餡を入れて団子状に丸め、バナナの葉でピラミッド型になるように包んで蒸して作ります。使う砂糖は、茶色いココナッツシュガーが多いようです。そうそう、油っぽく感じるのは生地を丸める時に食用油を使うためです。
中に入れる餡により、甘い系のタイプをカノムティアン・サイワーン (ขนมเทียนไส้หวาน)、塩っぱい系のタイプをカノムティアン・サイケム (ขนมเทียนไส้เค็ม) と分類しています。サイ (ไส้) は「詰物/具」、ワーン (หวาน) は「甘い」、ケム (เค็ม) は「塩っぱい」の意味。サイワーンの餡は、カノムサイサイの餡のように刻んだココナッツの果肉をココナッツシュガーで煮詰めたものが多いですね。サイケムの餡は、一般的に蒸した皮無し緑豆をすり潰したものを主材料にして、砂糖、刻んたニンニクなどの香味野菜/香辛料、そして塩とコショウの粉を加え油で炒めて作りますが、作り手/作り方で味や見た目に違いがあります。なお、豚のひき肉や刻んた干しエビを入れた餡もあるようです。
以下の写真は、屋台で売っているカノムティアン・サイケムの様子。ケム (เค็ม) と書いてあります。サイズが大きくて1個 5バーツですがバンコクではありません。バンコクの中心部ならサイズが小さくて1個 10バーツが基本かな? サイワーンより人気がありますよ。



ところで ...
以下の写真のカノムティアンは、黒っぽい色をしてますね。もち米粉に黒もち米粉を混ぜた生地で作っているのです。このスタイルも多いですよ。

以下の写真のカノムティアンの生地の中には、黒いものが入っています。春の七草のひとつの「ごぎょう/母子草」を煮てから細かくしたものとその煮汁が生地の中に練り込んであるためで、ごぎょうの風味も感じます。ごぎょうは、タイ語でチウカック (ชิวคัก)、漢名で鼠麹草です。中華の影響を受けた草餅の一種と考えることもできるのですよ。

我が家ではカノムティアン・サイケムの一択なのですが、私の感想では、塩っぱいと言うより砂糖が入っているので甘味が強いものが多いですが何となんと ... 辛いのです。この辛味の原因はコショウ。時々、非常にコショウの辛味が強いカノムティアンがあるのです。ほんのりコショウは許容範囲ですが、もしお菓子なら緑豆の甘い「あんこ」を入れた方が美味しいと思うのは私だけなのだろうか?
カノムケンと同じく中華圏の春節やお祭りに合わせて作ったり、ソンクラーン(タイの旧正月)や仏教上の祭事など先祖を偲ぶお祭りの時に作るお菓子ですが、日頃から街中の朝市やフードフェスなどでは、カノムティアンを蒸している屋台も見かけます。食べ慣れると癖になるお菓子かもしれませんよ。もち米の生地の部分は、日本の外郎(ういろう)のような食感で、コショウの風味も面白いのです。春節の期間は街中のいたる所で売っています。タイの伝統菓子の一つのカノムティアン、あなたも虜になるかもしれません。

こぼれ話
以下の写真は、バナナの葉の容器に入ったカノムケンと中に餡が入ったカノムティアンの両方の特徴を兼ね備えているのです。カノムケンとして呼ぶなら、カノムケン・サイワーンやカノムケン・サイケムでしょうね。カノムティアンとして呼ぶなら、カノムティアン・ケン (ขนมเทียนเข่ง) だと思います。

カノムケンのケンとは? 以下を参照願います。