国/地域により呼び名が違うようですが、シンガポールを始めマレー半島にはマルタバやムルタバと呼ばれている料理があります。このマルタバのタイスタイルがロティマタバ (โรตีมะตะบะ) です。ロティと同じ生地で中に入れる具材/餡を包んでロティと同じように焼くのでロティの冠が付いていると思われます。マレー半島からタイ南部、そしてバンコクへと北上してきたのでしょう。一般的には、南部料理かつムスリム料理に分類されています。バンコクではフードフェスや屋台村でロティマタバ屋台を時々見かけます。通常ハラールマークがありますよ。


デザート系の甘いロッティに特化した屋台と同じように、溶き卵とバナナなどの甘い餡を入れるスタイルもありますが、一般的には、ひき肉をメインにニンニクや玉ねぎのみじん切りなどの香味野菜をカレー粉といろいろなスパイスで炒めた餡を入れるスタイル。作り手により使う香味野菜やスパイスの違いがありますが、簡単に言えば「ひき肉のカレー粉炒め」です。鶏ひき肉ならマタべガイ (มะตะบะไก่)、牛ひき肉ならマタべヌア (มะตะบะเนื้อ) と言います。ガイ (ไก่) は「鶏肉」、ヌア (เนื้อ) は「牛肉」のこと。ムスリム系の料理なので豚肉はありません。酢とグラニュー糖で作った甘酢に生の唐辛子やキュウリ、ホームデーンなどの野菜を入れたナムアジャー (น้ำอาจาด) のディップが付いてきます。ナム (น้ำ) は「水」、アジャー (อาจาด) は「アチャール」のタイスタイルだから。ムーサテに付いてくる甘酢漬けの野菜と同じです。


フードフェスや屋台村でロティマタバ屋台を見かけたら、タイのマルタバ、一度挑戦してみてください。なお、バンコクではマレーシア料理系のレストランやロティマタバの専門店でも食べることができます。そうそう、ロティマタバ屋台では、平焼きパンのロティや昔ながらのコンデンスミルクたっぷりのもちもちロティも扱っています。
こぼれ話
ロティマタバに見た目が似ている料理があります。ベトナム料理の「バインセオ」が源流のカノムブアンユアン (ขนมเบื้องญวน) ですね。