イサーン地方にはガイタイナーム (ไก่ใต้น้ำ) と言う名前の料理があります。ガイ (ไก่) は「鶏」、タイ (ใต้) は「下」、ナーム (น้ำ) は「水」の意味。だから、「水の下の鶏」と言う何とも不思議なネーミングですね。
作り方の概要を説明した方が名前の由来が分かるでしょう。
様々なハーブとスパイスをクロック(調理用の石臼)で擦り潰したペーストを馴染ませた鶏肉を鍋の中に入れ、鍋蓋の代りに冷たい水を張ったボールを乘せて鶏肉が適度に柔らかくなるまで煮込みます。なお、水は加えません。頃合をみて追加のハーブやスパイス、イサーン地方で使う魚醤のナムパラー (น้ำปลาร้า) などの調味料で味を整えて、さらに煮込み続けます。このタイミングで熱くなったボールの中の水を冷たい水に交換。鶏肉が柔らかく煮えたら完成の流れ。

材料や調味料から立ち上がった水蒸気が冷たい水が入ったボールの底に当たり水に戻されて下に落ちるのですね。この水分の循環だけで蒸すように調理するのです。故にガイタイナームと呼ばれているのです。なお、グランガイ (กลั่นไก่) とも言うようです。グラン (กลั่น) とは「蒸留」の意味なので「蒸留鶏」。水分を蒸発させて再び冷却する工程からグランガイのネーミング。そのため、ボールの中の水が熱くならないように定期的に水を交換するのがベストなのです。
この調理法はスパイシーな風味とハーブの香り、肉のうま味を閉じ込めることができる上に圧力鍋のような効果もあるので非常に柔らかな鶏肉に仕上がるのですよ。
ガイタイナームはイサーン地方の郷土料理あり家庭料理。作り手により様々なレシピがあるようです。代表的なハーブやスパイスは、乾燥唐辛子、黒コショウ、ニンニク、エシャロットのホームデーン (หอมแดง)、ガランガルのカー (ข่า)、レモングラスのタックライ (ตะไคร้)、コブミカンの葉のバイマックルー (ใบมะกรูด) など ... なお、レモングラスは多めに使います。これらをクロックで細かくなるまで擦り潰してペーストにするのが美味しさの秘訣とのこと。なお、手羽系やもみじ、内蔵系を美味しく食べる調理法かもしれませんね。
以下の写真はイサーン系の丸鶏のローストチキンを売っている屋台で見つけた鶏もつのガイタイナーム。鶏もつはクルアンナイガイ(เครื่องในไก่) と言います。タックライを初め、たくさんのハーブの繊維が見て取れます。


この料理はイサーン系のおかず屋台にならあるかもしれませんね。もし見つけたら是非、挑戦してみてください。

以下は、ウィチット ムクラ シェフが作るガイタイナームの作り方の動画。参考まで ...
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=XRg-Q6X3rvM&t=3s