プラーニンと言う名前のティラピアの話

プラーニンのアイキャッチ タイ料理

プラーニンとは、淡水魚の「ティラピア」のことで、タイでは至るところで養殖が盛んに行われている。なお、プラー (ปลา) とは「魚」の総称である。しからば、ニン (นิล) とは? この件は後述することにする。
私がタイに住み始めた約20年ほど前の話。当時の街中の屋台で売っている焼き魚と言えば、その多くはナマズだったことを思い出す。最近では、ナマズの代わりにプラーニン (ปลานิล) なる魚が幅を利かせているのだ。おかず系屋台で売っている魚もプラーニンが多い。庶民の魚と呼ばれたプラートゥーの値段が上がり、プラーニンが庶民の魚の座を奪うことになる日も近いかもしれない。もしかしたら、既にそうなっている可能性すらある。

プラーニンの特徴は、体高と体幅があるので食べれる身が多い、小骨がなく身離れも良い、いずみ鯛と言われるように鯛や黒鯛に近く身質は悪くない。その姿は黒鯛に似ている。遠目から初めてこの魚を見たときには、黒鯛と見間違えた記憶がよみがえる。肉厚で非常に食べやすい魚なのだが、魚の個体や調理方法によっては、残念にも川魚特有の泥臭さを感じることがある。海魚で育った私には磯臭さは問題ないが、泥臭さは厳しいのだ。しかし、ナマズを始め川魚を食べ慣れているタイ人は、あまり気にならないようだ。今でも内陸部の田舎のタラート(ローカルマーケット)で、プラートゥー以外の海魚を見かけることは稀だと思う。

以下の写真は、スーパーマーケットに並ぶ生のプラーニンの様子。大きな売り場を持つスーパーマーケットやタラートの魚屋の場合、S/M/Lのサイズ区分でキロ単価が違う。とあるスーパーマーケットでは、Mサイズで 500g〜700gと書いてあった。キロあたり 50バーツ前後だろう。タラートなら更に安く買える。なお、プラーニンは素揚げ、または塩焼きで調理するのが一般的。

スーパーマーケットに並ぶプラーニンの様子
スーパーマーケットに並ぶ生のプラーニンの様子

以下の写真は、プラーニンの素揚げ専門屋台でよく見られる風景。プラーニントート (ปลานิลทอด) である。トート (ทอด) は「揚げる」の意味。臭み取りのため、塩水に漬けて「塩水処理」をすることが多いかもしれない。小さなサイズから大きなサイズまで並んでいる。サイズ違いで当然価格が違う。

プラーニンの素揚げ専門屋台でよく見られる風景
プラーニンの素揚げ専門屋台でよく見られる風景

以下の写真は、おかず屋台のプラーニントートの様子。そのサイズはプラートゥートートとほどんと同じ。一人用のサイズである。なお、小さいサイズは、基本素揚げで塩焼きで売られることはまずない。

おかず屋台の様子(右側上:プラーニン、右側下:プラートゥー)
おかず屋台の様子(右側上:プラーニン、右側下:プラートゥー)

以下のおかず屋台の写真も見て欲しい。上に見える袋詰めは、タイ人に人気のつけダレ、ナムプリックガピ。ナムプリックガピと言えば、プラートゥートートが定番だが、プラートゥートートとプラーニントートが並んでいるのだ。今では、プラートゥーと同等またはそれ以上にタイの庶民の食生活に浸透している様子が伺える。

おかず屋台の様子(右側:プラーニン、左側:プラートゥー)
おかず屋台の様子(右側:プラーニン、左側:プラートゥー)
おかず屋台の様子(右端:プラーニン、左端:プラートゥー)
おかず屋台の様子(右端:プラーニン、左端:プラートゥー)

以下の写真のプラーニントートの背ビレを見て欲しい。プラーニンの背ビレは硬く先が鋭いのでカットしてあることが多い。テイクアウト時の配慮だろうと想像している。

背ビレがカットしてある素揚げのプラーニンの様子
背ビレがカットしてある素揚げのプラーニンの様子

以下の写真は、とある社員食堂のランチメニューの様子。プラートゥーには小骨が多いが、プラーニンには小骨が無いので食べやす上、素揚げなので臭みもない。とても美味しいおかずになるのだ。右上の小さな器の中身はつけダレのナムチムジェオ。ナムチムジェオとの相性も非常に良い。

プラーニン

以下の写真は、サムロット (สามรส) と呼ばれるタイ風の南蛮漬け。サムロットとは「3つの味」と言う意味。 タイ料理の基本となる「甘味」「辛味」「酸味」のことである。かつては、プラートゥートートを使ったサムロットが多かったと思うが、最近はプラーニントートのサムロットもよく見かけるようになった。

プラーニントートのサムロット
プラーニントートのサムロット

以下の写真は、プラーニンの塩焼き屋台でよく見られる風景。キツ目に化粧塩をするのが一般的。プラーニンパオグルア (ปลานิลเผาเกลือ) である。パオ (เผา) は「強火で焼く」、グルア (เกลือ) は「塩」の意味。パンダンの葉 (バイトゥーイ:ใบเตย) とレモングラス (タックライ:ตะไคร้) などのハーブを割いた腹の中や口の中にふんだんに詰め、少々のタピオカ粉と水を加え混ぜて湿らせた粗塩で化粧し炭火で焼く流れだ。なお、その他のハーブとして、コブミカンの葉 (バイマックルー:ใบมะกรูด) やパクチーの根、粒コショウもありだろう。一般的にMサイズ以上の大きなプラーニンしか塩焼きにしない。

プラーニンパオグルア屋台でよく見られる風景(大きなサイズのみ)
プラーニンパオグルア屋台でよく見られる風景(大きなサイズのみ)
炭火で焼いているプラーニンパオグルアの様子
炭火で焼いているプラーニンパオグルアの様子

プラーニンパオグルアはスーパーマーケットの惣菜コーナーで見かけることもある。付属の緑色のつけダレは、魚介類料理に使うナムチムシーフード (น้ำจิ้มซีฟู้ด) である。プラーニンパオグルアは、このナムチムシーフード系のタレで食べることが多い。

スーパーマーケットの惣菜コーナーのプラーニンパオグルア
スーパーマーケットの惣菜コーナーのプラーニンパオグルア

以下の写真は、ローカル色の強いレストランの焼き場の風景。40cm は優にあるプラーニン、重さにしたら1kg オーバーだろうと想像できる。このレストランのメニュー名はプラーニンパオ、価格は 250バーツ。

レストランのプラーニンの塩焼きの風景
レストランのプラーニンの塩焼きの風景

ところで、赤い色のプラーニンがある。プラーニンデーン (ปลานิลแดง) やプラータプティム (ปลาทับทิม) などの品種である。タイにおける品種改良型。デーン(แดง) は「赤」、タプティム (ทับทิม) は「ルビー」のこと。見た目が良いので、レストランなどで使われることが多い。多分、小さいサイズを見たことが無いので大きなサイズしか出荷しないと想像している。なお、タイではプラーニンの品種改良が盛んに行われていて、いくつもの改良型があるようだ。

以下の写真は、とある洒落たレストランの焼き場で見た赤い色のプラーニンの塩焼き風景。もちろん大きなサイズである。

赤い色のプラーニンの塩焼きの様子
赤い色のプラーニンの塩焼きの風景

以下の写真は、スーパーマーケットのロータスで取った写真を使わせてもらっているので、プラータプティムだと思う。プラータプティムは、CPグループで開発した赤い色のプラーニンなのだ。よって、CPグループ系列のスーパーマーケットであるマクロやロータスの店舗で扱っているはずだ。身質が良いとのこと。

ロータスに並ぶジャンボサイズのプラータプティム
ロータスに並ぶジャンボサイズのプラータプティム

写真のプラータプティムはジャンボサイズなので値段が高いことが分かると思う。キロあたり 99バーツ。普通の黒いプラーニンのジャンボサイズは 79バーツ。ちなみに、プラータプティムのMサイズは 59バーツ。プラータプティムは、普通のプラーニンより値段が高いことが伺える。価格は参考まで。

なお、以下の写真はプラーニンの活魚の様子。タラートの大きな魚屋なら活魚も扱っている。

タラートのプラーニンの活魚の様子
タラートのプラーニンの活魚の様子
タラートの魚屋のプラーニンの様子(活魚ではない)
タラートの魚屋のプラーニンの様子(活魚ではない)

以下の写真もタラートの魚屋の様子。ウロコ、頭と内臓を外して下処理済みのプラーニンを売っていることも ...

プラーニン

以下、タイ公共放送 (Thai PBS) のプラーニンの養殖場の動画。参考まで ...
YouTube : https://www.youtube.com/watch?v=SGwD2PSrUio

プラーニンのニンとは
プラーニンは「魚仁/仁魚」が由来になっていると書いてある記事/ブログが溢れていることは承知している。現上皇陛下が皇太子時代に「ティラピアの養殖」を提案し、ナイルティラピア 50尾を送った。上皇天皇のお名前が明仁(あきひと)なので ... のような内容である。果たして、そうなのだろうか? 読んで疑問は感じないのだろうか? 「○仁」のお名前の歴代天皇/皇太子がたくさんいる上、さらに、ジンひとでなく「ニン」と読ませるのである。

まず、日本の外務省のホームページにある「海外主要メディアの日本関連報道」(平成28年11月14日付)にあるプラーニンの記事を紹介する。
[掲載日:10月22日付 媒体名(国名):ネーション・テレビ(タイ)]
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ip/page4_002489.html
そこには ...
1964年に天皇陛下が皇太子時代にタイを訪問された際に …(中略)… プミポン国王陛下にティラピアを寄贈された。プラーニンの名前は「黒い」色の魚の意味。
と書いてあるのだ。

次に、Department of FIsheries(タイ水産局)のプラーニンに関する記事(2020-05-12付)を紹介する。
https://www4.fisheries.go.th/local/index.php/main/view_activities/113/1270
以下は、その記事の中に書かれている一部の抜粋である。
ได้ทรงจัดส่งมาทูลเกล้าทูลกระหม่อมถวายแด่พระบาทสมเด็จพระปรมินทรมหาภูมิพลอดุลยเดช เมื่อวันที่ 25 มีนาคม พ.ศ.2508 และต่อมาในวันที่ 17 มีนาคม พ.ศ.2509 ได้พระราชทานชื่อปลาชนิดนี้เป็นภาษาไทยว่า "ปลานิล" ซึ่งมีความหมายว่ามีสีดำ หรือ สีนิล โดยออกเสียง nil ตามพยางค์ต้นของชื่อชนิด niloticus นั่นเอง …
ざっくり意味するところを説明すると ....
まず、この魚は1965年3月25日にプミポン国王陛下に送られ、1966年3月17日に陛下はこの魚をタイ語で「黒とティラピア」を意味する「プラーニン:ปลานิล」と名付けたと書いてある。文章の意味するところは ...「นิล」とは、黒い宝石「Black Spinel:ブラックスピネル」のこと。そして、ニンの発音は、この魚の名前である niloticus の頭3文字「nil」を指す。niloticus とはナイルティラピアのことなのである。そして「nil」をタイ語で発音すると「ニン」なのである。タイ人英語が分かる方ならピーンと来ると思う。セントラル (Central) デパートがセンタン、プリントアウト (Print-out) がピンアウRLの発音の法則/慣習に従っているのだ。

とのことで、プラーニンとは「黒い宝石の魚」と解釈すべきなのでは?
wikipedia:https://th.wikipedia.org/wiki/นิล 参考まで ...