タイの赤アリの卵の旬 カイモッデーンの話

カイモッデーンのアイキャッチ タイ料理

カイモッデーン (ไข่มดแดง) の季節到来。季節限定の珍味なのですよ。カイ (ไข่) は「卵」、モッ (มด) は「アリ/蟻」、デーン (แดง) は「赤」の意味。だから、カイモッデーンは「赤アリの卵」のこと。赤アリの卵は働きアリと女王アリになる卵が違うらしい? 前年の乾季が始まった時期や生活環境等で違いがあるようですが、3月から5月頃は女王アリになる卵の産卵時期でサイズが大きく、締まりがあり、非常に美味しいのです。なお、パックワーン (ผักหวาน) と言う植物の若芽が芽吹く季節と重なり、このパックワーンと一緒に食べることが多いようです。カイモッデーンを食べる習慣のある地域として、タイの北部地方やイサーン地方が有名です。

今年はソンクラーンの連休前に嫁の実家に帰郷することに ... 嫁の実家はタイ北部地方。嫁が突然「カイモッデーンが食べたい!」と宣い、知人に電話で採取依頼。55555 ... なお、この季節になるとタラート(ローカルマーケット)にもカイモッデーンを売る店が現れるのですが ... 以下の写真が嫁の田舎のタラートで売っているカイモッデーンとパックワーンの様子。

タラートのカイモッデーンとパックワーンの様子
タラートのカイモッデーンとパックワーンの様子

以下の写真は知人が採取してきたカイモッデーンを綺麗に水洗いした様子。必ず2〜3回は水を交換しながらゴミや汚れを取り除く必要があります。カイモッデーンは生食も可能で、現地で取り立てを食べる強者もいるようですが、衛生上良いはずが無いでしょうね。

綺麗に水洗いしたカイモッデーンの様子
綺麗に水洗いしたカイモッデーンの様子

まずは、カイモッデーンのみを入れたタイ風玉子焼きと付け合わせの生のパックワーンを紹介しましょう。カイモッデーン入りのタイ風玉子焼きはカイチャオカイモッデーン (ไข่เจียวไข่มดแดง) と言います。好みのナムプリック (น้ำพริก) と一緒に食べるのがタイスタイル。ナムプリックとは「唐辛子ベースのつけダレ」のこと。今回は自家製のナムプリックパオ (น้ำพริกเผา) です。

カイモッデーンのみカイチャオカイモッデーン
カイモッデーンのみカイチャオカイモッデーン

以下の写真がパックワーン。パックワーンのワーン (หวาน) は「甘い」の意味。実際に食べてみると、ほんのりと甘いのです。

付け合わせの生のパックワーンと自家製ナムプリックパオ
付け合わせの生のパックワーンと自家製ナムプリックパオ
生のパックワーンの様子
生のパックワーンの様子

カイチャオが一番カイモッデーンの風味が分かる料理方法かも。辛くないので辛いものが苦手な子供でも食べることができます。その味/風味ですが ... 例えば、腹から取り出だして直ぐのイクラよりも臭みがなく淡白で、柔らかい皮のプチッと感は似ているかも。醤油漬けにしたイクラや白子ポン酢の方が遥かに癖があります。卵特有のクリーミー感/ジューシー感はありますが、嫌な癖は全くありません。

以下の写真は、カイチャオカイモッデーンの下ごしらえの様子。特別に変わった作り方ではありません。溶いた卵に綺麗に洗った生のカイモッデーンを入れ、お好みで適当な具材も入れて普通にカイチャオを作れば完成です。

カイチャオカイモッデーンの下ごしらえの様子
カイチャオカイモッデーンの下ごしらえの様子

次に、パックワーンとカイモッデーンのスープ仕立てを紹介しましょう。タイ語で言うならゲーンパックワーンカイモッデーン (แกงผักหวานไข่มดแดง) かな? ゲーン (แกง) とは「煮込み料理」の総称。醤油やオイスターソース、好みの調味料で味を付けたスープと一緒にパックワーンとカイモッデーン、酸味のあるトマトと生唐辛子を軽く煮込んで完成。レストランなら本格的なトムヤムスープにするのでしょうが、家庭で作るスープは各家庭のレシピで作れば良いでしょう。一般的には辛味のあるスープにします。

ゲーンパックワーンカイモッデーン
ゲーンパックワーンカイモッデーン

最後に紹介するのが漬けスタイルのドーンカイモッデーン (ดองไข่มดแดง) です。ドーン (ดอง) とは「漬け/漬ける」の意味。漬けにもいろいろなレシピがあるだろうと想像できますが、今回のドーンは塩水に漬けたスタイル。もちろんナンプラーで漬けるスタイルもあるでしょう。ニンニクと普通に炊いたご飯をクロック(タイの調理器具の石臼)で潰したペーストを塩水に溶き、カイモッデーンをその中に漬け込みます。一晩以上冷蔵庫で寝かせれば完成。水で戻した乾燥唐辛子と一緒に食べると美味しいとのことでしたが、嫁は生唐辛子が好きと私にも強要する始末。 55555 ...

ドーンカイモッデーン(水で戻した乾燥唐辛子を乗せたみた)
ドーンカイモッデーン(水で戻した乾燥唐辛子を乗せたみた)

塩っけが効いているのでドーンカイモッデーンもご飯のおかずで食べるのです。辛味が欲しい時には、水で戻した乾燥唐辛子や生唐辛子を噛じるのがタイスタイル。

ご飯に乗せたドーンカイモッデーン
ご飯に乗せたドーンカイモッデーン

上の写真を良く見るとアリの姿が確認できますよ。巣によって産みたての卵と孵化が近い卵が当然ありますよね。今回のカイモッデーンはこの違いをグループ分けしてあった様子で、孵化が近い卵をドーンにしたようです。我が家の嫁は、気づきもぜずに美味しい美味しいと言って食べていたのですが ...

他にも紹介出来なかった調理方法がたくさんあります。ラープ (ลาบ) スタイルもあるし、もちろんイサーンスタイルのサラダ風のヤム (ยำ) スタイルもあるでしょう。ココナッツミルクと卵を使ったホーモック (ห่อหมก) スタイルなども ...

さてさて ...
バンコクでカイモッデーンを見つけることは非常に難しいでしょう。今では遠い昔、イサーン料理のレストランでカイモッデーンのスープを食べた記憶がありますが、季節限定なので巡り合わせが良かったのかもしてませんね。もし幸運にもカイモッデーンがメニューにあったとしても値段が高い可能性もありそうです。品質の違いや時期外れなのかは分かりませんが、キロあたり 1,000バーツ以上の値が付くカイモッデーンもあるらしい。普通でもキロあたり 500バーツ前後の可能性もありそうです。カイモッデーンは、高級食材なのですよ。今回の嫁の実家のカイモッデーンは採取者から直接買っているのでもちろん安いのは言うまでもありません。なお、最近はカイモッデーンを塩水に浸した状態の缶詰が幾つかのメーカーから発売さてれいるようです。タイ語でカイモッデーングラポン (ไข่มดแดงกระป๋อง) と言います。浸し水を捨てれば、そのまま料理に使えるらしく、通販でも買えるようです。

旬の取り立て新鮮なカイモッデーンに挑戦したい方、タイ北部地方またはイサーン地方まで足を運んでください。季節限定の珍味であることは、お忘れなきように!

ところで ...
地域の慣習や個人の好みもあると思いますが、イサーン地方では働きアリも一緒に食べる傾向があるかもしれませんね。また、卵に混じっている孵化したての羽付きアリを好んで食べる方もいるようです。なお、我が家の嫁の田舎では、タラートにある何軒かの店先のカイモッデーンを観察しましたが、取り除きが不完全で働きアリが混じっている袋詰めもありますが、取り除くことが基本だと思います。

こぼれ話
モッデーンはツムギアリのことで、タイでは至る所で簡単に見つけることができます。攻撃的な性格なので気をつけていないと噛まれます。

モッデーンの様子
モッデーンの様子

モッデーンは葉を紡いで丸い形状にした巣を樹上に作るのです。長い棒や竹竿の先に目の細かいカゴを取り付けて、巣の下にカゴが来るようにして長い棒を巣に突き刺し、巣を揺すって卵をカゴで受け止めるのです。もちろん、カゴの中には働きアリも入るので、いろいろなテクニックを使い卵だけを集める流れ。一つの巣で十分な量の卵が集まらなければ、複数の巣から採取することに。高い場所にある巣もあれば、当然のようにアリに噛まれることになるのですが、高値で売れるので季節限定の貴重な収入源にしているタイ人もいるのですよ。
以下の写真は、嫁の実家の敷地内で見つけたモッデーンの巣の様子。

モッデーンの巣の様子
モッデーンの巣の様子

以下の写真は、嫁の親類の敷地内で見つけたモッデーンの巣の様子。写真に写っているだけで7個の巣が確認できるのです。巨大コロニーを形成しているのだろうか?

7個の巣が確認できる写真
7個の巣が確認できる写真

以下、TNN(タイのTVチャンネル)のカイモッデーンの採取風景と缶詰を作る様子の動画。参考まで ...
YouTube : https://www.youtube.com/watch?v=o101B6p6IIs