何故か?頭が下を向いている魚、名前をプラートゥー (ปลาทู) と言います。初めて目にし時には、その姿に驚きますよね。プラートゥーは、サバ科に属する和名をグルクマと言う魚の仲間。一般的な大きさは十数センチ程度で、身質や風味はアジに近く非常に美味しい魚だと思います。臭みのある川魚の多いタイにおいて、日本人にとっては嬉しい魚でしょう。プラートゥーは、街中の至る所で目にすることができます。丸い籠(蒸籠=セイロ)に入れて売っていることも ...
蒸して、または茹でてあればプラートゥー・ヌン (ปลาทูนึ่ง)、フライにしてあればプラートゥー・トート (ปลาทูทอด)、焼いてあればプラートゥー・ヤーン (ปลาทูย่าง) と言います。ヌン (นึ่ง) は「蒸す」、トート (ทอด) は「揚げる」、ヤーン (ย่าง) は「焼く」の意味。プラートゥー・ヌン は、かつては蒸して作ったのかもしれませんが、実際のところ、茹でてある場合が多いようです。そして面白いことに、フライスタイルも焼きスタイルもプラートゥー・ヌンを使って調理するのです。
一般的にプラートゥー・ヌンは、エラと内臓を外してから頭を折って、茹で専用のセイロ (ケン・プラートゥー:เข่งปลาทู) に2〜3匹ずつ入れ、そのセイロを幾つか積み重ねた状態で大鍋に沈めて塩茹する流れで作られます。そうそう、子持ちのプラートゥーは、卵は残してあることも。セイロを使うことで煮崩れ防止になるのでしょう。このセイロに入れる時に頭を折った方が収まりが良いとのことで、頭を折るようになったとか??
この作り方は、サムットソンクラーム県のメークローン界隈の方法で、このメークローン産のプラートゥー・ヌンが非常に人気を呼び、プラートゥー・メークロン (ปลาทูแม่กลอง) なるブランドになったとのこと。その後、この人気にあやかり他の産地でもプラートゥー・ヌンの頭を折るスタイルを取り入れ、今では頭が折れていることがプラートゥー・ヌンの証になったのです。プラートゥー・ヌンは日持ちがする上に流通手段の進歩も手伝って、タイ全土に広まり手軽に食べれる庶民の魚になりました。たぶん昔は安かったのでしょうね。
最近は衛生面を考慮してなのか? 販売効率アップのためなのか? セイロ入りのプラートゥー・ヌンはめっきり減っています。代わりに、発泡容器などを使ったパック売りが主流です。
以下の写真は、ローカルマーケットで売っているプラートゥー・ヌンの様子。サイズにより価格が結構違うことが分かると思います。もちろん、サイズが大きければ、価格が高くなります。
以下の写真は、Tops で売っている真空パックのプラートゥー・ヌン。冷蔵棚を覗いてください。サイズ違いもあります。ローカルマーケットより安心感はありますが、値段は高いですよ。
プラートゥー・ヌンは、他の料理の具材として利用したり、冷蔵庫で保存しておけば日持ちするので、食べる前にプラートゥー・トートやプラートゥー・ヤーンとして調理し直すのが一般的なタイスタイルでしょう。
プラートゥー・トートやプラートゥー・ヤーンは、おかず屋台やスーパーマーケットの惣菜コーナーで売っているので、そのまま食べれます。なお、調理が簡単なのでプラートゥー・トートが圧倒的に多いですね。薄く衣を付けてあるプラートゥー・トートもあります。
プラートゥー・トートは、生野菜や蒸し野菜/茹で野菜、タイオムレツの一種であるカイチャオ・チャオム (ไข่เจียวชะอม) などと一緒にナムプリックガピ (น้ำพริกกะปิ) などのつけダレで食べるのがタイの定番の一つですが、そのまま、ご飯のおかずでも美味しいですよ。塩味が薄いなら醤油を垂らしてください。
そうそう、プラートゥーの身をほぐしてナムプリックに仕立てたナムプリックプラートゥー (น้ำพริกปลาทู) は面白い料理です。ナムプリック (น้ำพริก) とは「唐辛子を使ったつけダレ」の総称です。なお、カイチャオ・チャオムに興味のある方は「カイチャオ(タイ風オムレツ)」を参照願います。
さてさて ...
バンコクの場合、鮮魚市場や一部のローカルマーケット、一部のスーパーマーケットでは、頭が折られていない生のプラートゥーを売っています。扱っている店が限られていますので、見たことがない方もいると思います。我が家の近所のローカルマーケットでは、たま〜に売っている程度です。何故?直ぐに食べれられるプラートゥー・トートはおかず屋台で、茹でてあるプラートゥー・ヌンならローカルマーケットで手軽に買えるのに、わざわざ生魚を買って自宅で調理するような面倒なことをしないのがタイスタイル。調理できる/したい方も少ないでしょうね。55555 ...
生のプラートゥーは、フレッシュな状態を表すソット (สด) を付けてプラートゥー・ソット (ปลาทูสด) と言います。同胞諸君、プラートゥー・ソットを見つけたら、プラートゥー料理に挑戦してみるのも面白いかも?
伝統的なタイ料理にもプラートゥーの煮付けがあるのですよ。参考まで ...
こぼれ話
以下の写真は、とあるスーパーマーケットの生のプラートゥー。プライスカードには、タイ語で「輸入したプラートゥー」と書いてあるのです。従来のプラートゥーよりサイズは大きいし、丸々と太っているので美味しそうですよ。
ところで、タイではプラートゥーの水揚量が激減しているとのことで、市場に出回ってるプラートゥーの多くは、海外からの輸入に依存しているとのこと。驚きますよね。興味のある方は「ปลาทูนำเข้า:輸入プラートゥー」や「วิกฤตปลาทู:プラートゥーの危機」などのキーワードでお調べください。確かに、以前よりプラートゥーの値段は高くなっています。日本にも同じように水揚量が激減している身近な魚がありますが、タイでもプラートゥーが、庶民の魚ではなくなる日が近いかもしれませんね。
実は、既に庶民の魚の座が危ういのです。プラーニン (ปลานิล) と呼ばれている淡水魚のティラピアが街中に溢れています。プラーニンの名前の由来も含めて興味のある方は、以下も読んでみてください。