タイのマンゴスチン マンクットの話

マンクットのアイキャッチ タイの果物

果物の女王と言えばマンゴスチン。マンゴスチンは、タイ語でマンクット (มังคุด) と言います。上品な甘酸っぱさとジューシー感のあるマンゴスチンは、タイを代表する人気の果物の一つです。5月になると街中の果物屋台やスーパーマーケットにはマンゴスチンが並び始めます。

街中の果物屋台のマンゴスチン
街中の果物屋台のマンゴスチン

マンゴスチンの食べ方ですが ...
まず横腹に爪を立てて皮に裂け目を入れてから軽く押しながら皮を緩める/揉むようすると皮が少しずつ裂けていきます。その後は、手で割るように開いたり、上下を両手で逆方向にひねって開きます。なお、このやり方だと果肉が潰れることがあるので、慣れるまでは果物ナイフで横腹を一周カットした方が良いかもしれません。果肉は乳白色で5~7の房に分かれているので、爪楊枝などを利用して取り出しましょう。なお、1~2の房には種が入っていますが、種は食べません。

果物ナイフを使わずに皮を開いたマンゴスチンの様子
果物ナイフを使わずに皮を開いたマンゴスチンの様子
果物ナイフを使って皮を開いたマンクットの様子
果物ナイフを使って皮を開いたマンゴスチンの様子

ところで、以下の写真を見れば想像がつきますよね。お尻の模様で皮を剥かずとも果肉の房の数が分かるのです。

マンゴスチンのお尻の模様(5、6.7と違いがある)
マンゴスチンのお尻の模様(5、6.7と違いがある)

マンゴスチンはすべてが同一品種。雌だけで繁殖できる単為生殖で花粉を作らないそうです。品種違いはないのですが、生産地ブランドがあります。
ナコーンシータマラート県のマンクット・カオキーリーウォン (มังคุดเขาคีรีวง) やラノーン県のマンクット・ナイウォンラノーン (มังคุดในวงระนอง) が有名です。有名生産地ブランドのマンゴスチンは、サイズも大きく、品質管理もされているので値段も非常に高いのです。特にサイズが大きくて完熟前の赤紫色の状態だと尚更です。そうそう、タイはマンゴスチンの輸出国の一つで日本にも輸出しているようです。なお、輸出用の規格にパスできるような高品質なマンゴスチンの生産農家は、引取価格が高い輸出業者に出荷するので、庶民が味わえる機会は少ないのですよ。なお、生産量はチャンタブリー県が多いようです。

タイのマンクット(マンゴスチン)の話
以下の写真は、街中の果物屋台の様子。赤味がある赤紫色から黒に近い黒紫色までいろいろな色のマンクットがあります。

いろいろな色のマンクット
いろいろな色のマンクットの様子

若い果実は緑色。濃いピンク色の斑点やまだら模様が出始めた頃に収穫。この段階では果肉が皮から分離しにくいため、まだ食用には適していません。この段階から赤紫色になるまで約4日。赤紫色になれば食べれるようになります。さらに一日〜2日が経つと、濃い紫色から黒紫色に変わり完熟。
完熟した黒紫色のマンクットは、次第に水分が抜けて乾燥して硬くなったり傷んだりします。そのため、屋台などで自分で選ぶことが可能なら、押して少しへこむくらいの硬さのもの、重量感のあるものを選ぶようにしましょう。

なお、熟度が低い場合には常温で追熟が必要です。完熟したマンクットを保存する場合は、ビニール袋に入れて口をしっかり閉じて冷蔵庫で保存します。冷蔵庫に入れれば追熟が止まります。

食べ頃のマンクットの様子(濃い紫色または黒紫色)
食べ頃のマンクットの様子(濃い紫色または黒紫色)

以下の写真のように皮に黄色い硬いのものが付いている場合があります。見た目は美しくないですが、中身の果肉には影響ありません。この現象は、果実が若い時に虫が樹液を吸うことによって起こるらしい。果実に傷が付くと、マンクットが樹脂を放出して傷を修復するとのことで、黄色い硬いものは修復の跡。綺麗に削り落とすことができるのですが、手間と時間との兼ね合いでしょう。なお、皮が美しいマンクットより甘くて美味しいらしい?

皮に黄色い硬いのものが付いているマンクット
皮に黄色い硬いのものが付いているマンクット

以下の写真のように黄色いシミが入っていたり、果肉が半透明になっている場合があります。この現象は、果実が突然水分を過剰に摂取したことが原因で起こるらしい。例えば、乾季で水分不足の状態のところに突然大量の雨が降ると、水分のコントロールができず、マンクットの果実へ水分、さらには樹液成分まで送られてしまうらしい。食べても問題はないのですが味は落ちます。私は多少の半透明や黄色いシミ程度なら食べますが、激しいものは食べません。美味しくないからです。

黄色いが入っていたり、半透明になっているマンクットの果肉
黄色いが入っていたり、半透明になっているマンクットの果肉

この水分過剰摂取の果実は、4%の塩水に浸して浮くか/沈むかで判別する方法があるようです。浮けば問題なし。しかしながら、マンクットの品質管理や出荷管理、例えば輸出基準や等級(見た目やサイズなど)の選別を必ずできる生産者や販売業者は限られているのです。これらの作業コストがマンクットの販売価格に反映されていると考えるべきでしょう。マンクットの価格には非常に幅があるのです。

幾つかの事例を紹介するので、購入時の参考にしてください。
以下の写真のように価格が安いものは、出荷までの各種の選別作業や管理が不十分、または、されていないマンクットかもしれません。見た目が良くないなどの訳ありのもの、サイズも熟度も不揃いもの、熟度が高く黒紫色のものが多いと思います。

キロあたり35バーツのマンクット(選別なしの一山なんぼ状態)
キロあたり35バーツのマンクット(選別なしの一山なんぼ状態)
キロあたり40バーツのマンクット(選別なしの状態)
キロあたり40バーツのマンクット(選別なし)
キロあたり50バーツのマンクット(熟度が高い)
キロあたり50バーツのマンクット(熟度が高い)

以下の写真は、最盛期または訳ありフルーツでよく見られるトラック販売の様子。もちろんマンクットのトラック販売もあります。

3キロで100バーツのマンクットのトラック販売の様子
3キロで100バーツのマンクットのトラック販売の様子

以下の写真は、サイズも熟度も揃っているし、まだ黒紫色になっていないマンクットの様子。庶民向けとしては標準または高品質に入るマンクットかな?

キロあたり70バーツのマンクット
キロあたり70バーツのマンクット

以下の写真は、デパートやスーパーマーケットの様子。選別されているマンクットでサイズは中以上が多いでしょう。サイズも熟度も揃っていますが、屋台より遥かに高い価格です。もちろん、有名生産地のブランド品もあります。

キロあたり199バーツ
キロあたり199バーツ
キロあたり179バーツ(赤紫色のマンクット)
キロあたり179バーツ(赤紫色のマンクット)

スーパーマーケットでも熟度が増し、黒紫色のマンクットになると安くなります。

キロあたり79バーツ(黒紫色のマンクットになると安くなる)
キロあたり79バーツ(黒紫色のマンクットになると安くなる)

さてさて ...
サワロットノイナーなどの追熟が必要なフルーツと同じで、見た目の美しい完熟前の状態だと値段が高いのですが、追熟したら見た目の美しさは「何処へ行ったやら」になりますよ。多少見た目が悪くてもサイズが小さくても完熟したマンクットなら美味しいのです。参考になれば幸いです。

こぼれ話
果物の女王のマンゴスチンの季節は、果物の王様のドリアンの季節でもあるのです。街中にはドリアンを扱う専門屋台もたくさん目に付くようになります。街中のドリアン専門屋台には、マンゴスチンも並べてある風景、さらに、スーパーマーケットなどでもドリアンの隣りにマンゴスチンを並べている風景を目にすることがあります。実は、これには深い意味があります。東洋の体を温める食べ物を「陽」、体を冷やす食べ物を「陰」とする食べ物の陰陽の話と関係があるのです。ドリアンはもちろん「陽」、ドリアンを食べた後に体が火照る体験をした方が多いはずです。そして、マンゴスチンは「陰」なのです。タイでは昔からドリアンを食べて熱くなった体は、マンクットを食べれば冷やすことができると考えられているからなのですよ。タイでは、女王と王様の関係が面白いですね。55555 ...
ちなみに、タイ語で「陽の食べ物」は、熱いのローン (ร้อน)、「陰の食べ物」は、冷たいのイェン (เย็น) で表現します。だから、体を温める果物は、ポンラマーイリットローン (ผลไม้ฤทธิ์ร้อน) と言い、体を冷やす果物は、ポンラマーイリットイェン (ผลไม้ฤทธิ์เย็น) と言います。ポンラマーイ (ผลไม้) は「果物」の意味、リット (ฤทธิ์) は「効力」の意味で薬や毒に使う言葉です。