ラートナー (ราดหน้า) のラート (ราด) とは「注ぎかける」、ナー (หน้า) とは、この場合は「表/表面」の意味。ラートナーとは「とろみのある餡かけ汁を麺の表面に注ぎかけた料理」のこと。なお、タイ語の発音は「ラーッナー」に近いですね。

ラートナーの麺は米粉のクイッティアオが基本。タイには細麺のセンレック (เส้นเล็ก)、極細麺のセンミー (เส้นหมี่)、太麺のセンヤイ (เส้นใหญ่) の3種類のクイッティアオがありますが、ラートナーに使われる麺は、極細麺のセンミーと太麺のセンヤイですね。センミーやセンヤイは シーユーダム (ซีอิ้วดำ) と言うタイの甘味のある黒醤油で下味をつけ、油で炒めて準備しておくのが一般的。
さらに、センミーを油でカリカリに揚げたミーグロープ (หมี่กรอบ) を用意している店もあります。グロープ (กรอบ) とは、食べ物に付く場合は「カリカリ感/クリスピー感」があるの意味。餡かけかた焼きそばのような感じになります。ミーグロープも準備しておくのが一般的。
付け合わせの野菜は、パッカナー (ผักคะน้า) と呼ばれるほんのりと甘みのある野菜。日本語でカイラン菜/芥藍菜。油で炒めたり、茹でたりして準備しておくのも一般的。


とろみのある餡かけ汁も準備しておくのが一般的。とろみは澱粉を使います。タイにはペンタオ (แป้งท้าว) と呼ばれるタオヤイモム粉 (ペンタオヤイモム:แป้งท้าวยายม่อม) の澱粉があるのですが、生産量が減少していて入手が難しく高価なので、代用品としてタピオカ粉などの他の澱粉が使われているようですね。ペンタオは、昔から料理やお菓子作りに使われている澱粉で、透明感と粘り気があり、澱粉老化がし難いとのこと。そして柔らかい豚肉のスライス入りの餡かけ汁になっているのが一般的。お店によっては溶き卵が入っている場合もありますね。醤油ベースの若干甘めの餡かけ汁ですので、日本人には親しみのある味なのです。

お客の注文の麺と付け合わせの野菜を器に入れ、豚肉入りの餡かけ汁を注ぎかけて完成です。非常にスピーディーですよ。ちなみに、センヤイはラートナーセンヤイ (ราดหน้าเส้นใหญ่)、センミーはラートナーセンミー (ราดหน้าเส้นหมี่)、ミーグロープならラートナーミーグロープ (ราดหน้าหมี่กรอบ) と言います。そうそう、例えばラートナーセンヤイに後乗せでミーグロープを乗せてもらえる店もありますよ。
テーブルには、クルアンプルン (เครื่องปรุง) と呼ばれる調味料セットがあるので、自分の好みの味に調整します。唐辛子、輪切り唐辛子入りの酢、特にコショウとの相性が良いと思います。


ちょっとしたフードコートには必ずあると思います。もちろん、街中のラートナー専門店や屋台もあります。辛くないので子供から大人まで人気の麺料理です。太麺のセンヤイなら何処のお店でも味的に大きくハズレることがない料理だと思いますが、揚げ麺は食感や油のニオイが残念なお店もあります。太麺のラートナーセンヤイ、私も大好きなタイ料理の一つです。
なお、エビやイカ、さらにパッカナー以外の野菜が入っているラートナーもあるのですが、それは特別なお店です。

こぼれ話
以下の写真がパッカナー。タラートやスーパーマーケットで売っています。

そうそう、ラートナーの店には、醤油味の焼きクイッティアオのパットシーユー (ผัดซีอิ๊ว) がある場合が多いです。それは、ラートナーと具材が共通だからです。パットシーユーも辛くないので子供から大人まで人気の麺料理です。