タイ料理 カボチャのレッドカレー カボチャとカレーペーストの話

カボチャのレッドカレー タイ料理

カボチャのレッドカレーは、タイ語でゲーン・ファックトーン (แกงฟักทอง) と言います。タイの代表的なレッドカレーの一つです。ゲーン (แกง) とは、便宜状カレーと呼んでいますが「煮込み料理の総称」です。崩れたカボチャがお汁にとろみを付け美味しいカボチャのカレー煮込みになるのです。
鶏肉を入れればゲーン・ファックトーン・サイ・ガイ (แกงฟักทองใส่ไก่)、豚肉を入れればゲーン・ファックトーン・サイ・ムー (แกงฟักทองใส่หมู) と言います。ファックトーン (ฟักทอง) とは「カボチャ」のことで金色の瓜を意味するのだろう。サイ (ใส่) とは「入れる」の意味。ガイ (ไก่) とは「鶏肉」、ムー (หมู) とは「豚肉」の意味。故に、鶏肉入りのカボチャの煮込み、または豚肉入りのカボチャの煮込みとなります。
カボチャのカレー煮込み、ゲーン・ファックトーンは、多くの惣菜屋やぶっかけ飯屋にある料理だと思います。是非、お試しください!!

カボチャのレッドカレー
ゲーン・ファックトーン・サイ・ガイ (แกงฟักทองใส่ไก่)
鶏肉入りのカボチャのレッドカレー

カボチャの話

少しだけ、カボチャの話。
肌がつるつるなカボチャは日本カボチャと呼ばれています。山岳民族を助けるための王室プロジェクトがあるのですが、多分、そのプロジェクトで日本のカボチャを作るようになったと思います。肌がゴツゴツなカボチャはタイ固有のカボチャです。この王室プロジェクトの恩恵でしょうが、タイの野菜は見違える程素晴らしくなりました。最近のカボチャは美味しいですね。以前は水っぽくて硬いカボチャがあったのですが ...

以下の写真が日本カボチャです。 ファックトーン・イープン (ฟักทองญี่ปุ่น) と呼ばれています。

タイのカボチャ
日本カボチャ (ファックトーン・イープン:ฟักทองญี่ปุ่น)

最近のこと。ミニサイズの日本カボチャを見かける機会が増えました。ファックトーン・イープン・ミニ (ฟักทองญี่ปุ่นมินิ) と呼ばれています。このミニサイズの日本カボチャを使ったサンカヤーファクトーン (สังขยาฟักทอง) も人気です。

ファックトーン・イープン・ミニ (ฟักทองญี่ปุ่นมินิ)
ファックトーン・イープン・ミニ (ฟักทองญี่ปุ่นมินิ)

以下の写真がタイカボチャです。 日本カボチャと区別するためにファックトーン・タイ (ฟักทองไทย) と呼ぶことがあります。

タイのカボチャ
タイカボチャ (ファックトーン・タイ:ฟักทองไทย)

そうそう、タイカボチャはサイズが非常に大きいものがあります。タラートでは、大きいタイカボチャは切り売りもしますよ。

タイカボチャの切り売りの様子
タイカボチャの切り売りの様子

カレーペーストの話

ここで、カレーペーストの話。備忘録を兼ねて乱暴ですが私感で書いてみます。
タイのカレーは、唐辛子といろいろな香辛料/ハーブなどをクロックで混ぜ潰してペーストを作り、そのペーストとココナッツミルクで食材を煮込み、ナンプラー、砂糖などで味を整える流れで調理します。クロック (ครก) とは「乳鉢」のこと。カレーペーストの総称をタイ語でプリック・ゲーン (พริกแกง) と言います。実際の料理名を付けてプリック・○○ ... ○もありです。例えば、パネーンなら、プリックゲーンパネーン (พริกแกงพะแนง)、またはプリックパネーン (พริกพะแนง) と言います。

グリーンカレーの総称をタイ語でゲーン・キアオ・ワーン (แกงเขียวหวาน) と言います。キアオ (เขียว) とは「緑色」、ワーン (หวาน) とは「甘い」の意味ですが、決して甘いわけではありません。緑色が目にも楽しいカレーです。緑色の唐辛子と緑色のハーブや香辛料で作ったプリックゲーン・キアオ・ワーン (พริกแกงเขียวหวาน) と呼ばれるカレーペーストを使います。

レッドカレーの総称をタイ語でゲーン・ペット (แกงเผ็ด) と言います。ペット (เผ็ด) は「辛い」の意味です。一般的にゲーンと言えば、この赤色系のカレーを指します。赤色の唐辛子といろいろなハーブや香辛料で作ったプリックゲーン・ペット (พริกแกงเผ็ด) と呼ばれるカレーペーストを使います。赤色を引き立たせたいなら乾燥した赤唐辛子であるプリックチーファー・ヘーン (พริกชี้ฟ้าแห้ง) をペーストに多目に入れます。緑色という制約が不要なので、いろいろな材料でペーストが作れます。

イエローカレーの総称をタイ語でゲーン・ガリー (แกงกะหรี่) と言います。ガリー (กะหรี่) とは「カレー」のこと。唐辛子といろいろなハーブや香辛料にカレー粉を入れて作った黄色のプリックゲーン・ガリー (พริกแกงกะหรี่) と呼ばれるカレーペーストを使います。黄色を引き立たせたいならカレー粉やターメリックをペーストに多目に入れます。カレー粉は、タイ語でポン・ガリー (ผงกะหรี่) 、ターメリックはカミン (ขมิ้น) と言います。更に黄色が強いカレーはゲーン・ルアン (แกงเหลือง) と言います。ルアン (เหลือง) は「黄色」のこと。プリックゲーン・ルアン (พริกแกงเหลือง) と呼ばれるカレーペーストもあります。なお、黄色いカレーの代表にマッサマンがあります。マッサマンはタイ語でゲーン・マッサマン (แกงมัสมั่น) と言います。マッサマンカレーは、黃色が強いものからそうでないものまで幅があります。プリックゲーン・マッサマン (พริกแกงมัสมั่น) と呼ばれるマッサマン用のカレーペーストは色々なメーカーから発売されています。なお、イエローカレーは、マッサマンの名前の由来のようにイスラム教徒の多いタイ南部に多いとのことです。魚のカレーが多いと思います。何故って、海があるからでしょうね。

なお、レッドカレー系にはゲーン・チューチー (แกงฉู่ฉี่) やゲーン・パネーン (แกงพะแนง)、ゲーン・クア (แกงคั่ว) があります。
レッドカレーのペーストは、レモングラス、ガランガル、コブミカンの皮、エシャロット、ニンニク、エビペースト、胡椒、乾燥唐辛子などの材料をクロックして赤いペースト状にしたも。これがプリックゲーン・ペットです。パクチー (ผักชี) の種とクミン (イーラー:ยี่หร่า) の種を入れることもあるらしい。
プリックゲーン・ペットにパクチーの種とクミンの種を入れずにパクチーの根を入れるとチューチーペーストらしい。プリックゲーン・チューチー (พริกแกงฉู่ฉี่) と言います。使う食材はエビや魚の場合が多く、カレーの汁をかけるよう盛り付ける特徴があります。
チューチーペースト砕いたピーナッツを入れるとパネーンペーストらしい。プリックゲーン・パネーン (พริกแกงพะแนง) と言います。パネーンはバンコクを含むタイの中部地方のカレーで、とろり系の仕上げで辛さは控え目。タイでは砕いたピーナッツをいろいろな料理のトッピンや隠し味として利用します。
チューチーペースト干しエビや干し魚を入れるとクアペーストらしい。プリックゲーン・クア (พริกแกงคั่ว) と言います。クアはタイの南部地方のカレーで、エビや魚の海鮮カレーが多いです。何故って、海があるから ...

さてさて ...
上述のレッドカレー系のペーストの説明では「らしい」の連発。実は料理人やメーカーのレシピを調べてみると違いがありますよ。地域の特性や使うメイン食材との相性などにもよるだろうし、料理人の知恵やこだわりや伝統と時代の流れ、料理人毎に独自の隠し味も材料割合のレシピもハーブ系の香りの好き嫌いもあるだろうし ... いろいろなカレーペーストが出来上がるのは当たり前ですよね。食べる側にも慣れ親しんだ味やこだわりもあるでしょう。いずれにしてもカレーペーストの区分を杓子定規に考える時代ではないのでは? 今ではタイ各地のいろいろなカレーペーストや食材が簡単に手に入るようになりました。カレーペースト専門店で美味しいカレーが食べたいと注文すると、レッドカレーペースト+マッサマンカレーペーストをすくってくれるらしい。赤味噌と白味噌の合わせ味噌と同じですよ。55555 ... カレーペースト専門店で数種類のカレーペーストを大きな器に山盛りにして量り売りをしいるのです。日本の味噌の量り売りと同じ光景です。そして、日本の味噌と同じように美味しいの評価基準も様々でしょう。

カレーペースト専門店
カレーペースト専門店

実際のところ、惣菜屋やぶっかけ飯屋のカレーをみても、赤色と黄色が混じり合ったような色のカレーもあります。ところで、カレーペーストも作る時代から買う時代に変わりました。スーパーマーケットでも通販でも買えますし ...「พริกแกง (プリック・ゲーン)」で検索してみてください。プリック・ゲーンとは、唐辛子ベースのカレーペーストの総称です。

スーパーマーケットのカレーペースト
スーパーマーケットのカレーペースト

ところで、レッドカレー、グリーンカレー、イエローカレーともココナッツミルクを使ったカレーなのですが、ココナッツミルクを使わないカレー (煮込み料理) がタイ北部地方のゲーン・ハンレー (แกงฮังเล) です。ココナッツミルクではなく水を使うのです。ゲーン・チューチーにもココナッツミルクは使わないらしい。タイ北部地方はココナッツミルクを作るヤシの木が少ないからかな? タイ北部地方の山岳部に行くと椰子の木が消えて代わりに松の木が現れます。チェンマイ、チェンライの山岳部では霜も降るのです。遠い昔はココナッツミルクが貴重品だったのでしょうね。

カボチャ以外の野菜の話

なお、カレーに入れる野菜はカボチャ以外にナスがあります。ナスはタイ語でマクア (มะเขือ) と言います。緑色のピンポン玉程のサイズの丸ナスはマクアプロ (มะเขือเปราะ) です。緑色のパチンコ玉程のサイズの丸ナス (スズメナス) はマクアプアン (มะเขือพวง) です。

マクアプロ
マクアプロ
マクアプアン
マクアプアン

ザックリですが、豚肉や鶏肉が主体のレッドカレー系の場合にマクアプアンが良く使われます。どちらかと言えば、とろり系に仕上げます。グリーンカレー全般にはマクアプロが使われるように感じます。

ジャガイモもありますが、マン・ファラン (มันฝรั่ง) と言います。「西洋のイモ」の意味なのです。鶏肉のマッサマンカレーに使われるようにイエロー系のカレーにしか入れないようです。歴史的には最初にタイ南部地方に伝来したイモのようで、他の地方では食べる習慣がなかったようなのです。

そして、惣菜屋で良くみるのがタケノコと鶏肉のカレーです。保存用に加工されたタケノコであるノーマーイ・ドーン (หน่อไม้ดอง) を使っていると思います。このカレーも捨てがたいですね。ノーマーイ (หน่อไม้) とは「タケノコ」、ドーン (ดอง) とは「漬物」の意味。タケノコを適度にスライスして塩水に浸けて発酵させた漬物です。ラタートでビニール袋やペットボトル入りのノーマーイドーンを見たことありませんか?

タケノコと鶏肉のカレー
惣菜屋のタケノコと鶏肉のカレー
ペットボトル入りのノーマーイドーン
ペットボトル入りのノーマーイドーン

なお、生ハーブとしてホーラパー (โหระพา) なるタイバジルの葉やバイマックルー (ใบมะกรูด) なるこぶみかんの葉も使われます。

ところで、日本のように人参が入ることはないのです。何故、人参入りのカレーがないのか?は ...

基本的に牛肉を使ったカレーは一般的では無いと思います。何故かと言えばタイ産の牛肉は柔らかくなるまで時間をかけて煮込む必要があるからです。水牛なのです。肉質が硬いのです。そうそう、バンコクならオーストラリア産の牛肉はスーパーマーケットでも買える時代になりました。しかし、タイ産豚肉やタイ産鶏肉とは比べものにならないくらいに高価なのですよ。

カレーを自分で作れば、選ぶカレーペーストもココナッツミルクの量も辛味も食材も思うがままです。以下、参考まで ...